研究課題/領域番号 |
20K14914
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
門倉 博之 東北学院大学, 工学部, 准教授 (50805497)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 階段室 / 滞留伝播 / 高層ビル / 全館避難 / 避難者歩行特性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,高層ビルにおける全館避難時の階段室内の混雑現象として,階段室内の滞留発生と伝播のメカニズムを明らかにすることにより,避難時の混雑軽減手法を確立することである。2020年度の研究計画として,①階段室内における滞留発生と伝播条件の分析,②歩行者デッドレコニング測定手法による階段室内降下時の避難者歩行特性の分析を計画した。しかしながら,令和2年度においては,新型コロナウィルスの影響により,予定されていた2箇所での高層事務所ビルの全館避難訓練の中止と群集流動実験が行えない状況となった。そのため,2019年に東京都内のある25階建て高層事務所ビルにて実施された全館避難訓練時の映像をもとにデータ分析を行うこととした。研究計画では,複数の被験者に加速度センサとウェアラブルカメラを装着する予定であったが,この避難訓練では,予備実験として,被験者1名に装着している。①階段室内における滞留発生と伝播条件の分析として,本研究内定前年に先行して行った研究実績であるが,滞留の発生要因と伝播条件の一つとして,踊り場から段部に下りる際の動作遅れが影響している可能性があることがわかったが,詳細な挙動については明らかとなっていない。そこで,②階段室内降下時の避難者歩行特性をみるため,被験者1名の階段室内の1歩ごとの歩行速度の変化と前方との距離について分析を行った。分析結果によると,段部上では,大きな速度変化がみられなかったが,踊り場と段部への降下時に速度変化がみられることが明らかになった。特に,段部から階踊り場への着地時において,階段室の扉が開いて流入した際に減速し,また,踊り場から段部へ下りる直前において減速することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により,予定されていた2箇所での高層事務所ビルの全館避難訓練が中止となり,また,被験者による群集流動実験が行えない状況となった。そのため,内定前年度に行った予備実験のデータを用いて,階段降下時の歩行特性について分析を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においても,新型コロナウィルスの影響により,25階建て高層事務所ビルの全館避難訓練が中止となった場合には,①過去の実測調査データの比較,②階段室内における部分的な流動実験,③避難シミュレーション実装のためのモデル化を以下のように行う。 ①階段室内における滞留発生と伝播条件の分析については,2019年実測調査データとこれまで観測を行った全館避難訓練のデータを比較し,滞留伝播の発生要因と伝播条件について分析を行う。②歩行者デッドレコニング測定手法による階段室内降下時の避難者の歩行特性の分析については,部分的な流動実験として,被験者を数名1列に配置した状態で,階段を降下させ,前後の距離と歩行速度の関係を明らかにする。③避難シミュレーション実装のための滞留伝播のモデル化については,これまで得られた避難者の歩行特性を基に,滞留伝播の条件について整理し,避難シミュレーションへの実装を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響による高層事務所ビルにおける避難訓練の中止のため,実測調査に必要な物品費,出張等の旅費,人件費・謝金の使用を見送ることとなった。次年度の避難訓練実施の際の使用としたい。
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