2022年度は、「公共景」を形成している主体に関する調査を行い、彼らとの議論を重ねながら、具体的な計画に向けた提案を行った。 まず近年実現した公共空間の代表的な事例として、小田急電鉄によって開発された「下北線路街」を、2021年度から継続して調査した。事業担当者へのヒアリングとともに、徐々に拡大していく開発の変遷、利用者の定点観測調査、多主体による開発との相互作用調査を行っている。これらの成果は、昨年度に共著『コミュニティシップ』(学芸出版社)にて論述したが、引き続き単著『迂回する経済の都市論』(学芸出版社)にて発表するよう準備を進めている。 また2022年冬からJR東日本企画とディスカッションや調査を重ね、沿線開発の前提となる居住者の地域認識や、ウォーカブルな生活環境を沿線上に展開していく「Joint-Transit Oriented Development(沿線TOD)」の構想を行った。 上記のように都市開発主体と直接かかわる調査が行われたほか、昨年度の名古屋都市圏オープンスペース調査に続き、本年度は尾道・倉敷周辺における民間整備のパブリックスペース調査も行い、来訪者・利用者のふるまいというミクロなスケールから首都圏以外の地域調査も行った。 一連の調査より、当初の研究計画で掲げた3つの問い(公共景が実現していると考えられる事例整理、各事例における景観要素の把握、公共景をつくりあげる主体と取り組みの実態把握)に対する知見が整理されたほか、公共空間の質に関する調査結果や、これらの知見を応用して都市デザインの方向性を提示することができた。
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