本研究は、住宅の活用困難化を防ぐ方法として使い手主体のリノベーションが創る地域コミュニティの働きに着目し、活用困難空き家の発生・ 拡大を防止し、流通・再生を促す予防的計画技術を開発することが目的である。本年度は3つの視点で研究を進めた。 1)前年度の調査対象である大阪府和泉市父鬼集落において流動化していなかった空き家が賃貸・売買された事例の実態調査を行い、消防団など30代から50代の中間コミュニティが空き家流動化を促進する可能性があり、移住者の事前に地域に親しむ態度とそれを受け入れ地域につなぐ母体の設置が重要であることを明らかにした。その成果を日本建築学会大会学術講演梗概集に3編投稿した。 2)大阪府堺市の戸建住宅地において自宅の空室などを開き合い趣味講座を開催する自治組織「泉北グループ・スコーレ」が、建築ストックを活かして高齢期の豊かなコミュニティを実現し、日常的な維持管理や改修を促すことで住宅の老朽化を防ぐことを解明した。その成果を日本建築学会大会にて発表し、技術報告集に1編投稿した(査読あり、2023年6月掲載) 3)前年度行った活用困難化した空き家の再生実践を継続し、完了した。施工の素人が専門家からの遠隔支援を受けて空き家再生を実践するための要件を素人側・専門家側の双方から明らかにし、効果的な協働のための計画技術を開発した。その成果を日本建築学会大会にて2編発表し、大会学術講演梗概集に3編投稿し、不動産オーナー向けセミナーにて発表した。
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