研究課題/領域番号 |
20K14929
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
樋口 諒 名古屋大学, 高等研究院(文), 特任助教 (70827196)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビザンティン建築 / 教会堂 / 寸法体系 / 工匠 / 三次元モデル |
研究実績の概要 |
東地中海の沿岸部に存在したビザンティン帝国史には、イスラーム勢力との抗争や聖画像破壊運動によって、初期(7世紀まで)と中・後期(8世紀以降)の間に史的断絶が存在する。この時期に建築活動の担い手は建築家から経験則に基づく工匠たちへと移行した。本研究は史料の残されていない初期から中期ビザンティン時代の社会的な変遷を明らかにする一つの鍵として残された建築に着目するものであり、特に工匠たちの経験的な知見において最も基礎的な要素と位置づけられる寸法体系に着目する。中期以降の寸法体系の実態が精査されてこなかった地方部において、異なる首都との関係性を有していたカッパドキア・クレタ島・キプロス島の三地域の教会堂群を実測し、地方部と首都の寸法体系を比較・検討することによって中期ビザンティン帝国全土の尺度を体系的に明らかにする。その成果はビザンティンの地方部における知識の伝達の実態とそれに首都が果たした役割を提示するものでもある。 次年度となる本年も、複数回の現地調査を行う予定であったものの、新型コロナウイルスの世界的な流行のためにそれらの予定はすべて取りやめざるを得なかった。代わりにこれまでに収集した資料の整理とインターネットで公開されている過去の教会堂の写真データベース等から研究資料を収集した。同時に、今後の調査を見据えて、写真測量法の習熟に努めたほか、こうした三次元モデルを研究資料として使用するための手法について模索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画上、本年度はギリシャ共和国のクレタ島にて現地調査を行う予定だったが、新型コロナウイルスの世界的な流行によって予定していた海外調査はすべて取りやめざる得なかった。 従って本年も前年度同様に、これまでに収集した資料の整理とインターネットで公開されている過去の教会堂の写真データベース等から研究資料を収集した。同時に、今後の調査を見据えて、写真測量法に習熟するために埼玉県行田市で試験的に三次元モデルを作成したほか、こうした三次元モデルを研究資料として使用するための手法について模索した。 以上のことから、研究の基礎的な情報の収集が遅れてしまっているために、やや遅れているものとして判断される。しかし一方で、23年度は多くの現地調査を行える予定であり、これまでの遅れを挽回することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究遂行に際しては、海外調査によって必要な情報を取得することが非常に重要である。残念ながら初年度および次年度は現地調査を行えなかったが、23年度は多くの現地調査が可能となる見込みである。これまでと同様に現有する写真資料等の整理、およびインターネット上で利用可能なフォトアーカイブ等の内容を把握することに努めると共に、これまでの分を挽回するように現地調査を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの世界的な感染状況の拡大によって、当初予定していた現地調査が行えなかったため、その分を中心として翌年へ繰り越した。
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