「クリスタル・パレスはパクストンが設計した」と言い切ることはヒロイックな虚像を生み出し、「クリスタル・パレスはパクストンが設計したのではない」と言い切ることは構法が自動的に建築を生んだかのような誤解を生む。二者択一ではなく、パクストンを含む「複数の設計者」が、「構法的・様式的な価値判断に基づく意思決定」をしていった結果、クリスタル・パレスがつくられた、というのが真の姿である。一連のクリスタル・アーキテクチュア群も同様に、人の意思だけによってつくられたのでもなく、物の技術だけによって生まれたのでもな。これまでの建築史記述からはこぼれ落ちていた、よりダイナミックな建築物同士のつながりが発見された。
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