研究課題/領域番号 |
20K14931
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
井上 亮 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (90804617)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 戦後都市空間 / 景観 / 都市計画 / 地方都市 / 保全・活用 |
研究実績の概要 |
本研究では、地方都市における戦後の都市計画とそれにより生み出された都市空間を対象としており、戦後の都市空間について歴史的経緯を明らかにし、詳細な現地調査を実施することで戦後都市計画によって生み出された都市空間の遺産的価値について評価する。そして今後のまちづくりに活用可能な資料として取りまとめていくことを目的としている。 本年度は、個別事例の研究として、戦後に計画された岡山市の円形状交差点の保全・活用や全国の中でも先駆けて始まった昭和46年優秀建築物表彰制度について調査・分析を行った。その結果、7ヵ所の円形状交差点の歴史的経緯について整理し、円形状交差点沿いに立地する環状扇形建築物(一部を含む)は9棟確認できた。そのうち5棟の平面計画の把握、具体的な利用方法をヒアリングにより明らかにした。また、円形状交差点内の広場や建物で実施されているイベントについても調査し、アートプロジェクトや祭り、移動式の屋台など一定の範囲のみではあるが、活用されていることが明らかになった。表彰制度については、戦後に実施された全国の表彰制度についてアンケート調査を実施し、その中でも特徴的な岡山市の事例を調査した。岡山市優秀建築物表彰制度については、昭和40年代から「緑と花、光と水のまちづくり」を進めるため、「都市美造成のための景観構想計画」を作成し、緑化や調和を審査基準に掲げながら実施してきた経緯があることから、全受賞物件の現地調査を実施することで、緑化と調和の達成度、維持管理の状況について明らかにした。初期の受賞物件の中には、緑化や調和といった要素がすべて取り除かれている建物も数多くあり、維持管理の課題が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、岡山においては、円形状交差点の環状扇形建築物の文献調査、平面計画と保全・活用における調査や、表彰制度に関する現地調査、アンケート調査が実施できた。全国の地方都市における戦後都市計画に関する資料収集については順調に進んでいるが、現地調査については、新型コロナウイルスの影響で岡山市以外の都市で実施することができなかった。現状では、調査の実施が岡山に偏っており、全国の地方都市に関する比較検討が進められていないことが課題として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、現在着手している岡山の戦後の事例について継続するほか、地方都市における戦後の都市計画に関する資料の収集・分析を改めて行う。コロナの影響により、当初予定していた現地調査については、タイミングをみて実施する予定である。現状では、中四国地方を中心に実施し、今後のまちづくりに活用可能な資料として取りまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の調査対象地が日帰り可能な地域であったため、宿泊費等の旅費を節約することができた。繰り越しされた費用は次年度以降に遠方の調査を実施する為の旅費として使用する。
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