研究課題/領域番号 |
20K14933
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
村上 しほり 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 客員研究員 (50746104)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 戦災 / GHQ / 占領 / 接収 / 復興 / 土地区画整理事業 |
研究実績の概要 |
2020年度は、当初予定していた国内・国外の新規調査に制約が生じたため、居住地に近い兵庫県(神戸市)と大阪府(大阪市・堺市)を対象に自治体公文書調査を行い、国立公文書館がデジタルアーカイブより公開している特別調達庁文書の調査による複数のレベルの異なる情報の照合・分析を行った。 神戸に関しては、都心に置かれた占領軍の宿営地であるイースト・キャンプと占領軍家族住宅の六甲ハイツの接収・設営の経緯と特徴について考察し、キャンプと家族住宅の立地やスタイルにおける条件の差と土地利用の交渉や接収解除後の整備への連続と断絶を見た。その成果として、「占領下神戸における土地・建物の接収とキャンプ建設に関する研究」を『日本建築学会計画系論文集』に投稿し、2020年12月に掲載された。 大阪に関しては、都心部の接収ビルと郊外の住宅接収と占領軍家族住宅の浜寺ハウスの接収・設営と分布の特徴、返還の経緯について考察し、接収解除の都道府県知事の交渉力の影響と駐留負担の流動性を明らかにした。その成果として、「占領下大阪における建物の接収と占領軍家族住宅地区の建設に関する研究」を『日本建築学会計画系論文集』に投稿し、2020年12月に掲載された。 このほか、神戸市の戦災復興構想をめぐる都市計画の立ち上がりと実施における多様な意見について「神戸市公報」等の資料から考察し、戦後神戸市の既成市街地形成の一端を明らかにした。その成果として「戦災都市における復興構想と神戸の都市計画」が『空想から計画へ―近代都市に埋もれた夢の発掘』(2021年3月)にぇおさ押された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、予定していた東京における国立公文書館・外交史料館、アメリカにおける米国国立公文書館での調査は実施できなかった。その一方で、可能な範囲における国内調査と、その成果を踏まえた論文投稿や書籍原稿執筆は計画していた数を超えるものとなり、十分な資料収集と分析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の国内資料調査を通して、地方自治体の行政区分を越えるエリアの一体性や地域間の占領軍対応の相関の一端が明らかになった。同時代的な大都市間での接収状況の情報共有等の実態も公文書群から明らかになり、今後の調査に活かす知見が得られた。 2021年度においては、前年度の研究成果から明らかになった課題の検討のため、未調査の地方自治体(兵庫県西宮市、伊丹市等)の公文書へのアプローチを早急に進め、占領後期の各地の市街地形成への占領の影響を検討していく。 国外調査については世界の情勢を見つつ、可能であれば渡航、不可能であれば現地法人への調査代行依頼等も視野に入れて再検討を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は世界的な新型コロナウイルス感染症の影響によって国内の国立公文書館や外交史料館・国会図書館、米国国立公文書館の閉館や移動制限が生じたため、十分な資料調査が実施できなかった。2021年度から2023年度の研究実施計画を見直し、社会状況を鑑みつつ、資料調査のための国内出張を可能なタイミングで行うこととする。 また、調査スケジュールの変更により、2021年度から2023年度の成果発表や研究会開催も順次遅れること、米国国立公文書館や豪州国立公文書館の調査も難しくなることが見込まれるため、国内資料で明らかにできる限界点の模索と、地域に特化した調査を進める想定である。
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