研究課題/領域番号 |
20K14934
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
石榑 督和 関西学院大学, 建築学部, 准教授 (10756810)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 東京 / 露店 / マーケット / 建物疎開 |
研究実績の概要 |
本年度は次の4点の研究を実施した。1)昨年度から進めてきた東京の新橋駅前ビルの前身となったマーケット「新生商店街(狸小路)」の研究を査読論文にまとめた。2)第二次世界大戦後の東京のマーケットの多くが建設された疎開空地が、戦中期にどの範囲で行われたのかを計画図から明らかにした。3)東京都心部の路上に第二次世界大戦後に現れた露店について写真史料から実態を検討した。4)本研究課題に関連した研究部会を組織して研究会を実施してきた。 1)では、個別のマーケットの建物の空間構成を復原的に考察するとともに、数年間の営業者の入れ替わりを明らかにすることで、これまでの戦後のマーケットを対象とする研究が検討できていなかった建物レベルの詳細な把握と営業者の流動性について明らかにした。成果は査読付き論文にまとめた(掲載決定、2022年度掲載)。 2)では、これまで網羅的には発見されていなかった東京の都区部の建物疎開を描いた図面史料を新史料として日本建築学会の査読付き技術報告論文で紹介し、史料としての利用の可能性を示した(掲載決定、2022年度掲載予定)。その上で戦後のマーケットの多くが建物疎開跡地に建設されていたことを明らかにした。 3)東京都心部に1945年から46年の間に現れた露店が、市街地においてどのような場所にどのような空間を設えて現れるかを写真史料から明らかにした。戦災と宅地の瓦礫整理や利用開始と関係して露店の位置が変化していることを明らかにした(日本建築学会関東支部研究報告)。 4)上記3点のような具体的研究を進めるとともに、日本建築学会近畿支部に昭和期市街地形成史若手研究部会を組織し、主査として本研究課題に関わる日本および東アジアの昭和期の市街地形成を研究する研究者を集め研究会を3回開催した。この研究部会の活動は次年度以降も続けていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内の都市を対象とした研究は計画よりも多くの研究をすでに実施し、成果をあげられているが、韓国と台湾の都市を対象とした研究が現地調査を実施できておらず進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は次の3つの研究を進める方針である。 1)初年度から進めている小樽の引揚者マーケットの形成と、防火建築帯への再開発の過程に関する研究の補足調査を行い査読論文にまとめる。 2)本年度進めた東京の建物疎開の研究は、第6次まで指定された建物疎開のうち、第4次までを描いた図面史料をもとにしていたため、第5次と第6次指定の建物疎開について空間的に実態を把握する作業が残されている。図面史料としては情報が残されていないため、次年度は空中写真から復原的に考察を進める。 3)台湾の高雄と基隆の水上に造られた商業空間について現地調査を行い、形成過程と現状の建物を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた複数回の調査出張が、まん延防止等重点措置によって中止となったため。計画していた調査出張は2022年度に実施し研究費を使用する。
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