近代天皇制における都市間比較研究をすべく、科研申請時は国内の複数の地方都市や台湾などを訪問して調査する予定であったが、コロナ禍の影響により、主に東京・大阪・京都・大津・佐渡に対象都市を限定し、調査を行った。 研究成果としては、近現代における全7件の大喪儀(英照皇太后大喪儀、明治天皇大喪儀、昭憲皇太后大喪儀、大正天皇大喪儀、貞明皇后大喪儀、昭和天皇大喪儀、香淳皇后大喪儀)について、式場に建設された仮設建築群の儀礼後の譲与・転用の実態を明らかにし、2篇の論文として発表した(長谷川香「近現代の大喪儀における儀礼建築の譲与と転用に関する研究(その1)」『日本建築学会計画系論文集』87巻801号、2022年および「近現代の大喪儀における儀礼建築の譲与と転用に関する研究(その2)」『日本建築学会計画系論文集』88巻807号、2023年)。また、上記の論文から展開させ、仮設建築群の儀礼後の譲与・転用と仏教界の関わりについて検証し、明治神宮史研究会で発表した(長谷川香「大喪儀における仮設建築の下賜と仏教界」『 神園』 Vol.26、2024年)。 また、東京・京都・大阪で開催された内国勧業博覧会の会場における天皇の儀礼空間の実態を明らかにし、2022年度の万博学研究会で発表するとともに、その成果を論文として発表した(長谷川香「天皇の儀礼空間としての博覧会―内国勧業博覧会と二つの博覧会構想に注目して―」『万博学/Expo-logy』Vol.2、 pp.116-142、 2023年)。 なお、現地調査はかなわなかったものの、台湾や韓国の行幸啓について文献調査を行い、その成果を交えて、広くアジアの視点から近代日本の儀礼空間について発表した(長谷川香「儀礼空間から読み解く皇都・東京」、TCS国際シンポジウム「都市問題再考:歴史、メディア、環境」2024年1月27日、名古屋大学)。
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