当該年度は昨年度に分析した史料「1455年イスタンブル家屋調査台帳」から得られた知見をまとめて、『都市史研究』に査読論文を投稿・掲載した。同様の内容は2022年6月にギリシアで開催された国際オスマン史学会にて発表をおこない、各国の研究者との討議を行い、好意的な反応を得た。ここではビザンツ末期の小規模な住宅建築とオスマン朝の住宅建築の間には大きな断絶があったと結論づけた。また比較の観点からオスマン都市の近代化についても考察し、20世紀初頭からイスタンブル市役所に奉職したオスマン・エルギンの著作の分析・翻訳を行った。 また同年8月にはトルコにおいて現地調査を行って、イスタンブルやアマスヤ、トカトなどに現存する18世紀以降の住宅建築の状況を確認した。これらの調査からは、18世紀前半をひとつの境として、住宅建築の空間に大きな変化が生まれたとの知見が得られた。 さらに2023年3月にはカイロでの現地調査を実施して、14世紀から17世紀にかけての住宅建築を調査した。いずれの住宅も規模や空間構成ともに同時期のオスマン朝住宅とは異なることが明らかになり、今後の比較考察を行う上で重要な知見を得た。
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