研究成果の概要は次の通りである。第一に1455年イスタンブル住宅調査台帳の分析により、当時の住宅の大半が小規模な平屋家屋だったと結論づけた。これは18世紀以降オスマン領で普及した中層で規模の大きい都市住宅とは異なる住居類型であった。第二にエジプトの住宅建築との差異が浮き彫りになった。カイロでは中流以上のすまいは中庭を中心として複数の開放的な接客空間をもち、閉鎖的な接客空間を用いるオスマン朝の住宅建築は異なる起源をもつことが示唆される。第三に都市空間の実態解明のため、前近代オスマン都市の行政組織とその近代化を著述したオスマン・エルギンについての論考を発表し、彼の著作の翻訳刊行を実施した。
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