研究課題/領域番号 |
20K14948
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
冨岡 孝太 名古屋大学, 工学研究科, 研究員 (70865568)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱制御材料 / 宇宙機 / 誘電体多層膜 / 断熱材 / 電波透過特性 / 宇宙機熱制御 / 熱物性 / 保護熱板法 |
研究実績の概要 |
近年,深宇宙探査機や月面探査機などの過酷な低温環境を経験する宇宙機が提案されている.しかし,電波通過面に適用できる高機能な熱制御材料は無く,厳しい熱環境では熱設計が成立しない.本研究では,自然界には存在しない電波透過性を有する宇宙用断熱材料RT-MLI(Radiowave Transmissive Multilayer Insulation)を創製し,革新的な熱制御システムを実現する.RT-MLIの高断熱化のためには,電波透過性を有し,低放射率な材料の開発が必須である.そこで,誘電体多層膜の干渉を使って,低放射率を示す電波透過型赤外反射材Controlled Optical Surface Film (COSF)を新たに創製する. 一年目は,低放射率を示す電波透過型赤外反射材の設計法の確立および実際に試作・評価行った. 1.まず,多層膜に用いる薄膜材の光学特性(屈折率,消衰係数)について測定を行い,候補材(Ge, ZnS, CaF2)を選定した.次に,誘電体多層膜の設計方法としてGA(Genetic Algorithm)を用い,光学的観点から意味ある組合わせを積極的に残すような評価関数を設定することで,膜数と放射率の最適化を図った. 2.上記方法で設計した誘電体多層膜を実際に試作し,熱光学特性を評価した.赤外分光器を用いた反射率測定から放射率を計算したところ,放射率は0.1程度を示し,低放射率かつ電波透過性を示す材料であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は,当初計画していた研究実施項目に関して,ほぼ計画通り達成することが出来ている.多層膜設計方法の改良により,赤外放射率0.06を示す電波透過型赤外反射材を初めて設計することが出来た.本材料は,金属と同等の低放射性能を誘電体で実現できる可能性を示唆しており,宇宙機熱設計のみならず,無線電力伝送技術や衛星のワイヤレス化等に対しても有意義な結果と言える.一方でCOVID-19の影響で,全半球放射率測定のための熱真空試験が未実施である.そのため,まずは垂直方向の放射率測定をFTIRによって行い,試料の事前評価を行った.今後,熱真空試験は他チャンバーを使う等の代替案を考慮しつつ実施する予定であり,支障はない.よって,本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,真空チャンバーによる宇宙空間を模擬した熱真空試験を行い,過年度に開発した熱制御材料の評価を行う.また,提案する小型保護熱板装置の妥当性を検証するために既存の断熱材の測定を行い装置固有の熱リーク量を明らかにする.さらに,提案する小型保護熱板装置によって新しく開発した電波透過型断熱材の評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19により熱真空試験の予定が延期となったため,未使用額が生じた.このため,試験実施を次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てることとしたい.
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