本研究では新たに提案した,プラズマ磁場閉じ込めの緩急を利用した宇宙用の無電極電気推進機の実証を目指す.この推進機では,管の中に作った閉じ込め磁場中にGHz帯の高周波を印加し,ECR放電と呼ばれるプロセスでプラズマを生成し,この状態でコイルを用いて閉じ込め磁場を一時的に弱めることでプラズマを排出し,推力を生成する.本予算においてECR放電に必要な高周波発生装置,高周波アンプ等の高周波機器を購入し,これらを組み合わせることで,周波数2 GHz~4 GHzの範囲で最大出力およそ15 Wの高周波を放射出来るシステムを完成させた.このシステムでは入射波と反射波のエネルギーを測定することが出来る.これを用いて、10 mPa以下に引いた真空チャンバ内において,穴の開いた磁石を両端にはめて閉じ込め磁場を作った直径10 mmの管内に0.1 SCCM程度の流量で流したアルゴンに対してECR放電プラズマを着火することに成功した.プラズマは印加する高周波のエネルギーを3 W程度に落としても着火し,実用化する上で目標としていたエネルギー範囲内での着火に成功した.また,磁場形状を有限要素法で計算することで,理想的な磁場形状の変化をもたらすコイルを設計し,製作した.さらに,コイルに電流を流すための電源や制御用のファンクションジェネレータを購入した.今後,これらを組み合わせることで推進機を作り,初年度に製作したターゲット式のスラストスタンドを用いて推進性能を評価していく.
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