研究課題/領域番号 |
20K14951
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
大島 健太 広島工業大学, 工学部, 助教 (20868335)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 深宇宙探査 / 天体力学 / 周期軌道 / 逆行軌道 / 円制限三体問題 / 円制限四体問題 / 中継軌道 / 長期安定性 |
研究実績の概要 |
2021年度は,地球まわりを逆行する周期軌道(以下,逆行周期軌道)の深宇宙探査における有用性および天体力学における意義を探求した.さらに,地球-月-太陽-探査機系の平面円制限四体問題に特有の逆行周期軌道に生起する不安定ダイナミクスについても調査した. 深宇宙探査への応用については,地球と深宇宙をつなぐ中継軌道として,逆行周期軌道の利用を提案した.その理由として,月スイングバイおよび太陽潮汐力を利用することで,十分小さい打ち上げエネルギーおよび投入マヌーバによって,地球から逆行周期軌道に遷移および投入可能であること,逆行周期軌道の弱不安定性により少ないマヌーバ量によって軌道保持が可能であること,また逆行周期軌道から月スイングバイおよびパワード地球スイングバイによって実用的な遷移時間とマヌーバ量で深宇宙に脱出可能であることを示した. 天体力学への応用については,太陽重力の摂動下において,地球まわりを逆行する軌道の広い長期安定領域を発見し,その要因となる線形安定な逆行周期軌道の群(ファミリー)を同定した.従来は地球-月系において,ラグランジュ点L4およびL5周辺や月近傍の擬周回軌道など,地球まわりを順行する長期安定な軌道が,宇宙塵などが捕捉され得る領域として注目されていたが,本研究は逆行軌道も有力な候補であることを示唆した点において意義があると考えられる. 平面円制限四体問題に特有の不安定ダイナミクスについては,地球-月系の円制限三体問題においては線形安定であった逆行周期軌道を,太陽重力の摂動を考慮して収束させると不安定性が生じる場合があることを見出した.この円制限四体問題に特有の不安定性に付随する安定・不安定多様体を調べた結果,円制限三体問題では保存されるヤコビ定数が大きく変化した後,元の値に戻るホモクリニック現象が観察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
地球まわりを逆行する周期軌道を深宇宙探査における新たな中継軌道の候補として提案することができ,さらには逆行周期軌道に生起する円制限四体問題に特有の不安定性を見出すことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
地球まわりの逆行周期軌道に関してこれまでほとんど先行研究が行われておらず,逆行周期軌道に関する研究を引き続き実施していく必要があると考えている.特に2021年度に探求した月軌道近傍の逆行周期軌道だけでなく,太陽重力の影響が顕著となる月軌道以遠の逆行周期軌道のダイナミクスを今後調査し,地球重力に捕捉される小惑星(ミニムーン)の軌道特性や工学的応用を探求していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に引き続き,参加した学会はすべてオンラインで実施され,計画していた旅費を使用しなかったため,次年度使用額が生じた. 次年度使用額は,翌年度の助成金と合わせて,さらに活発な学会参加のための旅費に充てる予定であるが,コロナ感染の状況によってはワークステーションなどの物品費として活用することで,研究を推進する.
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