研究課題
令和5年度は,昨年度に構築した軌道最適化手法の計算性能を向上させるため,目的関数および拘束条件の変数に関する一次導関数および二次導関数を解析的に導出し,非線形計画法のソルバーに実装した.それにより,非線形計画問題におけるラグランジアンのヘッセ行列を正確に求められるようになったため,従来手法や本手法に一次導関数のみを実装した場合と比較して,計算速度やロバスト性の向上を確認できた.研究期間全体を通して得られた成果については,下記(1)から(3)に分類して記載する.(1)制限三体・四体問題がもつ高次元な相空間に特有の,周期軌道に生起する遷移現象を解析した.空間円制限三体問題においては,軌道面内に存在する周期軌道の安定・不安定多様体の軌道傾斜角が一方向的に変化する現象を同定し,軌道最適化の手法を用いて周期軌道間の遷移軌道の設計に利用できることを示した.楕円制限三体問題においては,安定・不安定多様体の離心率が一方向的に変化する現象を見出し,円制限四体問題においては安定・不安定多様体のヤコビ定数(エネルギーに相当)が一方向的に変化する現象を見出した,(2)深宇宙探査に有用な周期軌道の候補として,地球まわりを逆行する周期軌道に滞在し,月および地球スイングバイを利用して深宇宙に脱出するミッションシナリオを検討した.特に周期が約14.8日の逆行周期軌道が,安定性および投入・離脱の利便性の観点から有用性が高いことを示唆した.副産物として,円制限四体問題に特有の周期軌道のファミリーが存在することを考慮した,周期軌道の計算手法を構築した.(3)天体の重力ポテンシャルの特異点を除去するために従来用いられてきた正則化手法を,非線形計画法の枠組みに組み込むことで,新しい軌道最適化の手法を構築した.目的関数および拘束条件の導関数から特異点を除去したため,ロバストに最適解へ収束することを示した.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Astrodynamics
巻: 8 ページ: 97~119
10.1007/s42064-023-0176-2
Guidance, Navigation and Control
巻: - ページ: -
10.1142/S2737480724500018
Advances in Space Research
巻: 72 ページ: 2051~2063
10.1016/j.asr.2023.05.055
https://www.growkudos.com/publications/10.1007%25252Fs42064-023-0176-2/reader