研究課題/領域番号 |
20K14955
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
後藤 亜希 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (90794074)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 原子状酸素 / 高分子材料 / 表面改質 |
研究実績の概要 |
本研究は、原子状酸素(AO)照射による高分子材料表面改質技術の開発と応用に向け、微視的突起構造形成メカニズムを明らかにすることを目的とし、2つの実施項目「(A)突起形状の支配因子の導出」、「(B)突起形状形成メカニズム・制御の検討」からなる。 令和2年度の項目(A)で、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレンフィルム(PP)、ポリスチレン(PS)はAOに対する浸食率が同程度にも関わらず、形成される突起構造の大きさや数密度が異なることが分かった。この要因として「高分子種に応じたAOの貫通深さや熱運動の違い」を想定し、令和3年度は項目(B)として、(1)陽電子寿命法(PALS)を用いた自由体積空孔の大きさの定量と、(2)突起構造の形状に対するサンプル温度影響の評価を行った。 (1)では、自由体積空孔の大きさはPE、PP、PSで異なり、AO照射によりわずかに小さくなることが分かった。また、陽電子の打込みエネルギーを振ることで、3種類の高分子ではAOとの反応が生じる深さが異なる(自由体積空孔が大きい高分子では深い)傾向が見られた。(2)では、異なる温度で制御したサンプルにAO照射し、SEMおよびAFMで観察することで、サンプル温度の上昇に伴い突起構造が大きく、また少なくなることが分かった。 以上の結果より、AO照射により形成される突起構造は、高分子の「高次構造(自由体積空孔や熱運動の大きさ)」に支配される可能性が高い。突起構造の形状をAOにより制御するには、高分子の高次構造を踏まえた照射条件の最適化が必要かもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
項目(A)で得られた「突起構造の形状が高分子の化学構造に依存する」ことの要因について2つの仮説を立て、PALS評価および温度制御下でのAO照射でそれぞれ検証できたため。
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今後の研究の推進方策 |
高分子の高次構造がAOとの表面反応に与える影響を明らかにするため、以下などの検討を進める。 (1)サンプルのキャラクタリゼーション(熱物性、結晶化度など) (2)(1)と表面形状や浸食率の相関 (3)PALS結果と表面形状の相関
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次年度使用額が生じた理由 |
AO照射実験の予定回数が当初予定より少なくなり、学会のオンライン参加により旅費も浮いたため。 次年度使用額は、サンプルのキャラクタリゼーション、照射後評価、論文投稿費などとして使用予定。
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