原子状酸素(AO)は約8 km/sを相対速度として高分子材料に衝突すると、表面を酸化および浸食し、ナノからマイクロスケールの突起構造を形成する。本研究は、AO照射による高分子材料の表面改質法の開発に向け、突起構造形成メカニズムを明らかにすることを目的とする。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンでは、AO照射に伴う質量損失や化学結合変化が同様にも関わらず、生じる突起構造の大きさや数密度が明らかに異なることを見出した。陽電子消滅寿命測定法を用いた評価などにより、高分子の高次構造(分子鎖の3次元的な配置)がAOとの相互作用が生じる空間スケールに影響し、突起構造の形状を左右する可能性を示した。
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