航空宇宙機や流体機械の設計のために、流れ場の非定常性をも考慮した空力設計の技術確立が求められている。非定常流体現象を考慮した設計のためには、流れ場に存在する様々な現象やスケール構造が互いにどのように影響を与えあっているのかを特定することが重要である。しかし、実験や数値計算で得られた3次元非定常流体データから現象やスケール構造を抽出し、それらの間の相互作用を解析する手法は未発達である。本研究課題では、縮約モデルや力学系の解析技術をもとに、数値流体シミュレーション結果やノイズを含む実験結果から特徴的な流体構造を抽出し、それらの現象間の関係を解析する技術の研究を実施した。
最終年度(3年目)となる2022年度は、時間遅れ座標による埋め込みと縮約モデルを組み合わせたノイズ処理技術および、過渡的な流体現象の流体構造を捉える新たなデータ解析技術の研究を実施した。研究期間全体を通じて得た重要な研究成果は、以下のようである。 1)力学系の時間遅れ座標による埋め込みとデータの低次元表現を組み合わせることで、非定常感圧塗料(Unsteady-PSP)計測データなどに含まれる大きなランダムノイズを除去する技術を提案し、その有効性を実証した。その結果を査読付き論文として発表した。 2)ノイズを含むデータに適した動的モード分解のアルゴリズムを提案し、既存手法よりもロバストに計算できることを実証した。その結果を査読付き論文として発表した。 3)過渡的現象や非周期的現象を含む流れ場の現象間の相互作用を解析するために必要なモード解析手法を提案した。
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