航空機等の空力特性を調べる手段として風洞試験がある.本研究では風洞試験で使用する新しい計測技術,具体的には,航空機等の空力特性を明らかにするうえで重要な,実験模型の表面圧力,表面温度,変形の3つの量を同時に計測できる手法の開発を目標に取り組んだ.本手法は,感圧(温)塗料法という塗料型の圧力及び温度のセンサ技術と画像相関法という物体形状の検出技術の2つの既存技術を組み合わせたものである. これまでの年度では,3つの量のうち,圧力と温度を同時に計測する手法を確立した.最終年度では,当初目標である変形を含めた同時計測に取り組む予定であったが,前年度までの取り組みにおいて後述する新たな発見があったため,計画を変更し,引き続き圧力と温度の同時計測について研究を推進した. 前年度までに,感圧塗料にそれぞれ別の波長帯をもつ2種類の励起光源を個別に照射することで,感圧塗料のセンサとしての圧力感度及び温度感度を制御できることを確認した.最終年度はこの機能をさらに拡張し,励起光の波長を混合することで感圧塗料の感度を任意に制御するという発想の下,その実証実験に取り組んだ.その結果,青色と緑色波長帯の光源をベースに両者の光源強度の混合比を制御することで,感圧塗料の圧力・温度感度を連続的に調整可能であることを明らかにした.通常の感圧塗料の感度は塗料の成分で決定され,塗布後の感度変調はできない.一方で,本研究で得た機能は,塗料塗布後にユーザーの意図に合わせてセンサ感度を変調する機能を提供するものであり,風洞試験を進めながら状況に合わせて任意の感度に後から調整できることを意味している.これは,試験の柔軟性に寄与する極めて有用な機能である. 以上より,当初計画とは異なるが,感圧塗料法に対して新たな機能を付与することができた.また,変形を含めた計測についても推進しており,今後公表する予定である.
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