本研究では、建造実績データを活用したデジタルツイン造船工程シミュレーション手法の構築を行った。造船工程における種々の不確実性のシミュレーションモデルへの組み込みについては、製品・ワークフロー・チーム・工場の4つに分けてモデルを作成し、ワークフロー内の各タスクを実施するときに発生する不確実性として、それぞれの作業者と使用することが可能な設備のスキルを確率分布で表して離散プロセスシミュレーション上で考慮できるように組み込んだ。また、過去の実績データからシミュレーションモデルを逆推定する手法の開発については、実績データを入力、製品・ワークフロー・チーム・工場の4つのモデルを出力とする手法を確立し、また必要なデータ項目についての整理も行った。これらの手法を検討するための仮想的な造船工場をモデル上で作成し、構築した手法を適用することでその有用性を定量的に確認することができた。また、造船所に過去の実績データサンプルをいただきながら構築した手法の実用性について議論した。具体的には、そのデータからシミュレーションモデルを作成するトライアルを実施し、実際の現場で行われた状況とシミュレーションモデルから出力された結果とのの相違について比較検討を行った。結果として、頂いたデータには現れていない他の工程の影響によって結果が異なる部分はあったものの、概ね現実的なシミュレーションが実施できていることが確認できた。
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