研究課題/領域番号 |
20K14963
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
前川 一真 神戸大学, 海事科学研究科, 助教 (20760664)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 液体水素 / 減圧沸騰 / 数値解析 / 舶用液体水素タンク / 海上輸送 |
研究実績の概要 |
本研究では、蓄圧状態で液体水素を海上輸送した際、真空断熱の破壊等により、タンク内圧が急激に昇圧し、安全弁・破裂板が作動した場合の、舶用液体水素タンク急減圧時におけるタンク内部の沸騰現象(気液相転移現象)について解明する。本年度では、主に以下の研究成果を得た。 1.液体水素タンク急減圧実験システムの構築:本件研究では、液体水素タンク急減圧実験システムを構築するために、初めに光学観測窓付きクライオスタット(小型液体水素タンク:約20 L)内部の温度を測定するための、4 Kから室温まで測定が可能なカーボンセラミックセンサー(CCS)の温度校正試験を行った。その後、クライオスタット内部に、100 mm間隔で6個のCCSを取り付けて、室温、液体窒素温度での確認を行い、良好な結果を得た。 2.液体窒素による急減圧予備実験:液体水素タンク急減圧実験システムの構築後、放出ガスラインに流量調整弁、電磁弁、熱交換器、流量計、熱電対温度計を取り付け、高速度カメラによって光学的にクライオスタットの液体水素槽を観測しながら、液体窒素による急減圧の予備実験を行った。その後、液体水素による予備実験として、液体水素槽に液体水素を移送し、本研究における最高使用圧力0.4 MPaGまで液体水素槽を加圧した。その際、水素の漏えいがないことを確認し、急減圧時における、液体水素タンク内部の温度・液面・圧力、流量計による蒸発ガス流量の計測に成功した。 3.数値解析ソフトを用いた急減圧時における液体水素タンク内部熱流体解析:本年度は、STAR-CCM+を用いて、蒸発モデルの構築を行った。本年度では、初めにSTAR-CCM+内に実装されている減圧沸騰モデルを用いた解析を行った。その後、新たなモデルとしてSchrageの式による蒸発モデルの構築を試みた。蒸発モデルの差による、蒸発量に関する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、液体水素タンク急減圧実験システムの構築に成功し、液体水素急減圧時における液体水素タンク内部の温度・液面・圧力、蒸発ガス流量の計測が可能となった。また、液体水素タンク内部圧力0.4MPaGまで急減圧実験が行える段階に到達した。数値解析においても、基本的な蒸発モデルの構築が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策して、まず令和2年度に構築を終えた液体水素タンク急減圧実験システムを使用し、液体水素の減圧時における初期条件(液体状態、初期充填率、減圧速度)を変化させ、液体水素の減圧試験を行う。実験では、初期条件の違いによる沸騰挙動を実験的に明らかにする。さらに、数値解析ソフトウェアSTAR-CCM+を用いて、急減圧時における液体水素タンク内部の温度・圧力、蒸発ガス量の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備実験で使用する予定であった液体水素を別実験の余った液体水素で行えたため、次年度使用額が生じることになった。 令和3年度分助成金に関しては、液体水素、ヘリウムガスボンベ、液体窒素、STAR-CCM+のメンテナンス費等に使用し、令和2年度に生じた次年度使用額は、液体水素および実験で使用する消耗品の購入費として使用する。
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