本研究では、蓄圧状態で液体水素を海上輸送した際、真空断熱の破壊等により、タンク内圧が急激に昇圧し、安全弁・破裂板が作動した場合の、舶用液体水素タンク急減圧時におけるタンク内部の沸騰現象(気液相転移現象)について解明する。本年度では、主に以下の研究成果を得た。
1.液体水素による急減圧実験:本研究では、令和3年度に引き続き、液体水素の減圧時における初期条件(液体状態、初期充填率、減圧速度)を変化させ、初期条件の違いによる沸騰挙動を実験的に調べた。特に、令和3年度の実験で液体の初期状態の違い(飽和状態と成層状態)で蒸発量に差が見られたため、本年度ではさらに追加で実験をし、詳細な実験データの取得を行った。急減圧による蒸発量は、温度分布が存在する成層状態の方が飽和状態より少ないことが分かった。初期充填率の違いで見ると、初期充填率が高いほど蒸発量が大きくなることが明らかになった。一方で、蒸発損失率に着目すると、初期充填率が高い方が小さくなることが明らかになった。最後に、減圧速度に着目すると、今回の実験条件では大きな差はみられなかった。今後、より大型な液体水素タンクで調べる予定である。
2.数値解析ソフトを用いた急減圧時における液体水素タンク内部熱流体解析:本年度は、令和3年度に引き続き、STAR-CCM+を用いて、蒸発モデルの構築を行った。本年度ではより長時間の解析を行うために、計算負荷の低減を目指し、最適なメッシュ形状および計算条件を調べた。さらに、実験値に近い解析モデルを構築するために、アコモデーション係数の改善、壁面熱流束の調整を行った。アコモデーション係数を比較した結果、今回の解析モデルではσ=0.00001において最も実験値の再現性が高い結果となった。
|