研究課題/領域番号 |
20K14966
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
河村 昂軌 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (80757724)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 損傷時復原性 / 浸水シミュレーション / 粒子法 / GPGPU / 有限体積法 |
研究実績の概要 |
損傷浸水事故発生時における客船の安全帰港シミュレーション手法を開発に向けて以下の検討を行った。 複雑な内部区画の浸水計算の様な強非線形現象に対して適用性が高い粒子法に対し二次元スライスグリッドによる領域分割手法と計算時間ベースの動的負荷分散手法を適用し高速化を行った。検証計算として自由表面の大変形や再突入が頻発する強非線形現象のひとつであるLNG 船等に搭載される角型のメンブレンタンクのスロッシング及びスワーリング計算を行い、4台から64台のGPUを用いて強スケーリング、各計算ステップの計算時間とCPU間、GPU間通信時間等を計測した。高さ方向の粒子の不均一による通信時間,同期待ち時間の増加など課題が残るものの、64台のGPUを用いた並列計算において50%程度の並列効率を保つことを確認した。 有限体積法を用いたCFDによる波浪中操縦運動推定手法の確立に向けてCFDによる長時間に及ぶ安定した波浪場の生成法について検討を行い、波長及び波向毎の安定した造波に必要な造波領域、透過領域及び格子分割数について調査を行った。合わせて計算タイムステップと波高の減衰の関係についても調査を行い、計算時間と波高の精度の関係について明らかにした。これらの検討を踏まえて、速度0における非損傷船体を用いた向波及び斜波における波漂流力計算を行った。本計算では模型試験との比較を行うために模型船拘束治具と同様に船体運動に対する定常力及び復原力を考慮した。海上技術安全研究所の実海域再現水槽にて実施された模型試験結果との比較を行い、波漂流力及び船体運動が高精度に推定できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主に粒子法計算コードの高速化と有限体積法を用いたCFDによる波浪中運動計算を行った。単純な並列化を実装した粒子法を用いて自由表面の大変形や再突入が頻発する強非線形現象のシミュレーションを行うと、領域毎の計算負荷のばらつきが大きくなり、並列効率が大幅に悪化する問題があったが、二次元スライスグリッドによる領域分割手法と計算時間ベースの動的負荷分散手法を導入したことで64台のGPUを用いて50%程度の並列効率を保つことを達成した。本研究にて必要な粒子数は数千万から数億程度と考えられるが、今年度実施した高速化により今後の検討が現実的な計算時間で可能となった。有限体積法を用いたCFDによる波浪中運動計算では模型試験との比較計算の他に舵、ビルジキール、バウスラスターの格子生成とそれらを重合させた重合格子による試計算を行っており、付加物を考慮したより現実的な船体形状表現とその数値計算に着手している。 以上より、当該年度の計画に対しておおむね順調に研究が進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は主に粒子法計算と有限体積法の連携法についての検討、有限体積法を用いたCFDによる付加物を考慮した波浪中運動計算を実施する。付加物を考慮した波漂流力計算を実施し、付加物影響について調査を行う。また追加の検討として損傷区画と損傷口の格子生成を行い、船体格子と重合させることで損傷船体の再現を試みる。簡単な損傷区画を有する船舶の横波中運動シミュレーションを行い、最終年度に実施予定の損傷模型を用いた波浪中動揺試験に向けた基礎データを収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会等がオンライン開催になり旅費等が必要でなくなったため、模型船の仕様が決定しなかったため次年度使用額が生じた。来年度に模型船の艤装品、計算資源使用料等に使用する。
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