研究課題/領域番号 |
20K14970
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
笛木 隆太郎 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (80846056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルミニウム合金 / 溶接 / 疲労 / ピーニング |
研究実績の概要 |
令和3年度は、ニードルピーニング(NP)の施工により無害化可能な欠陥寸法を疲労試験により明らかにするにあたり、試験方法に関する予備的な検討を実施した。本研究で想定する欠陥は、溶接止端部に生じる表面き裂であるが、疲労予き裂を所望の寸法になるように制御することは困難である。一方、人工的に表面欠陥を加工するとき裂よりも開口幅が大きく、これをき裂と等価とみなすのは破壊力学的観点から合理性に欠ける。ただし、NPは施工部周辺が塑性流動するため、実き裂よりも開口幅が大きい人工欠陥であっても、その上からNPを施工することにより、開口している欠陥が潰れ、実き裂状になる可能性を考え、この仮説についての検証を行った。具体的には、試験片に深さ0.5mmから1.5mmの人工半円スリットを放電加工し、NPを施工した。NPの施工前後でX線による画像撮影を行い、開口幅の変化を確認した。深さ0.5mmおよび深さ1.0mmの半円スリットについては、NP施工後は開口幅が大幅に減少し、ほぼ実き裂と同等とみなせる大きさとなっていた。一方、深さ1.5mmのスリットに対しては開口幅が狭まるものの、実き裂よりは明らかに大きく、深さ1.0mm~1.5mmの間の部分が潰れることなく残留していた可能性が考えられる。他の材質を対象とした過去の研究より、NPで無害化可能な欠陥寸法は1mm以下であったため、深さ1mmのき裂状欠陥まで用意できれば十分な検討ができると見込まれる。そこで、令和4年度は、人工半円スリットをNP施工で潰したものをき裂とみなして疲労試験や破壊力学的評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、所定の寸法の表面き裂をどのように発生させるかという実験実施上の課題について検討を行い、試験方法を決定することができ、本試験に向けた準備を整えることができたため、おおむね順調に進展しているものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、人工半円スリットをNP施工で潰したものをき裂とみなして疲労試験や破壊力学的評価を行い、NP施工により無害化可能な欠陥寸法を明らかにするとともに、その結果に至るメカニズムについて考察をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試験体の製作および人工欠陥(半円スリット)の導入について、当初の計画で予定していた数量を令和3年度内に加工しなかったため、次年度使用額が発生した。未使用額については、令和4年度に試験体製作および人工欠陥加工のための費用として使用する予定である。
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