国内外で新エネルギーの一つとして期待できる波エネルギーを取り出す波力発電装置には様々な形式があり,その1つである並進動揺型は波力により生じた可動部の運動を発電機構へ伝達することで発電する.波力発電装置の実現に向けて,波エネルギーを多く回収可能にする様々な制御戦略の開発が行われている.本研究でも,運動変位に制約がある状態でも発電電力量を最大化できるパワースペクトルを用いた制御手法を開発した.このような制御戦略には波力発電装置の運動を数式で表すモデル化が必要であるが,様々な要因により実物と数式モデルとの差(モデル化誤差)が生じて,想定した発電性能は得られない. さらに本研究では,モデル化誤差がある場合でも十分な発電性能が得られるようにモデルベース強化学習による制御戦略を開発する.これまでに可動浮体の減衰力係数にモデル化誤差がある規則波条件下において最適化する方法を開発したが,不規則波に対しては適用できなかった.そこで,計測データから運動モデルを学習して,学習したモデルを使って制御を最適化する手法を開発した.水槽試験で制御状態の波力発電装置の運動を計測し,計測データを用いてガウス過程回帰を作成し,制御入力を考慮した上下変位の回帰モデルの構築を行った.さらに,この回帰モデルを用いて,学習時および学習時とは異なる波条件で制御最適化が可能であることを確認した.この手法はモデル化誤差がある状態でも制御を行うことができ,学習したモデルは実物にあった波力発電装置の発電電力量の評価,最大変位の推定などに利用できる.
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