研究課題/領域番号 |
20K14978
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
李 根 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(数理科学・先端技術研究開発センター), 研究員 (00774035)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 潜水機集団 / AUV / 最適化 / エネルギー効率 / 航行安定性 / 流体力学 |
研究実績の概要 |
1.解析・数値研究領域では、重大な進展を達成した。AUV集団の複雑な流体力学を解明するため、マルチレベル構造のハイブリッド計算モデルが開発された。AUVの個体レベルの流体力学は、乱流モデルを備えた商用CFDソフトウェアで直接計算され、更に群体レベルの解析モデルに出力された。群体レベルの解析モデルは、ポテンシャル流理論を利用し、非常に低い計算コストで大量のAUVの最適な隊列を計算できた。本研究では、2台から約100台までのAUV集団の最適な隊列を計算し、最適化の規則を見つけた。それは、各AUVが隣のAUV同士の後部の約半分体長の位置に置き、AUVの間の横方向距離をできるだけ減少、他のAUVの尾流場を避けることである。この規則より、「チェーン状」のAUV集団隊形が形成され、最小の平均エネルギー消費が達成される。研究で分かったことは、AUVの数が増加し、AUV同士の横方向の距離が減少する場合、省エネ効果が明らかになる。数十台のAUV集団の平均エネルギー消費を12%削減する効果が得られる。 これらの研究成果は、今後のAUV集団の利用において重要な参考となる。研究成果は複数回の国際会議で発表され、学術雑誌への投稿が行われており、現在審査が進行中で、近い将来に正式な発表を期待する。 2.工学実験領域で、JAMSTECの曳航実験水槽(波動水槽)が実験の精度要求に対応できないため、実験を一時中断、実験計画を修正、AUVが曳航水槽の台車に接続するフレームを再設計、水中用の力センサーをデザイン・特注した。次の年度,機器や備品が揃った後に実験を再開する予定がある。 3.AUVの流れ場と魚の流れ場・風力発電機の流れ場には強い相関関係があるため、魚類遊泳・風力発電機に関する一連の研究も実施し、重要な研究成果と論文発表を取得した。これらの研究結果は、AUV流体力学メカニズムの研究にも参考できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
工学実験領域では、技術的な困難が発生した。解析・数値の研究結果より、2台のAUVが非常に近い距離のみで5%までのエネルギーの節約効果が発生できる。これに対しては、実験の設計や測定精度に大きな課題をもたらす。JAMSTECの曳航水槽は1970年代に建設され、力センサーやデジタル調速装置が装備されておらず、この実験の精度要求に対応できないため、今年度は実験のデザインを修正した。曳航水槽の台車に接続、AUV間の相対位置を固定用のフレームを再設計した。水中用の力センサーを特注した。次の年度,機器や備品が揃った後に実験を再開する予定がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.実験領域の技術的な困難を対応するため、科学研究費助成事業補助事業期間は一年間で延長した。来年度は、AUVの水槽曳航実験の完成に力を注ぐ。個人の全体の仕事の最高優先事項として進める。 2.実験結果と解析・数値の研究結果を比較し、融合させる。 2.研究成果の解釈・統合、論文の執筆、学会や論文の発表を加速する。研究成果発表の機会を積極的に模索する。 3.研究で得られたAUV最適化「チェーン状」隊形は社会に公開し、産業活動に貢献する。「チェーン状」隊形の特許申請について積極的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に、AUV水槽実験には技術的な困難が発生した。実験のデザインを修正し、次の年度、機材や備品が揃った後に実験を再開する予定である。次年度使用額(147,944円)を次年度再開するAUV水槽実験で物品や消耗品費として使用する予定である。
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