本研究では、医療資源配置最適化問題を制約条件付き組合せ最適化問題と捉え、量子アニーリングを用いて医療資源配置最適化シミュレーションを目的とする。2022年度では、この目的を達成するため、2021年度までに量子アニーリングを用いて作成した、各医療資源の二次医療圏単位の集計データに則した医療資源最適配置の塗分け地図に則り、実際の医療資源の変化量をベースに各二次医療圏の医療資源数を変化させ、その変化によりどの程度関連する地域死亡率が変化するか、シミュレーションを実行した。なお、本研究の途中に新しく2020年度のデータを取得することができたため、新たに医療資源最適配置の塗分け図を得るため、再度D-waveマシンを用いた量子アニーリングを実行した。日本全国を対象とするため、そのままではD-waveマシン上で実装することはできなかったが、qbsolvやハイブリッドソルバーを用いることで実機実装に成功した。作成した医療資源最適配置塗分け図の中でも、精神科医師数と心療内科医数の合計値に対して作成した塗分け図に注目し、示された優先順位に基づいた医療資源数の変化量と、空間統計回帰モデルの当該医療資源の回帰係数とを掛け合わせることで、自殺死亡率の地域差への影響をシミュレーションした。二次医療圏間の隣接関係を考慮したハミルトニアンを用いた量子アニーリングで得られた塗分け図に従って精神科医数・心療内科医数を増減させることで、自殺死亡率の地域差を減少させ、かつ全体の平均値を低下させることができた。一方で、十分に自殺死亡率の地域差を解消するためには相当数の医師数の増減が必要であることが確認された。現実的に自殺死亡率の地域差を解消するためには、医療資源の数の増減のみでは不十分であり、各地域の特性に合わせた運用も同時に重要であることが示唆された。
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