研究課題/領域番号 |
20K14980
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 英明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90837387)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 交通シミュレーション / 潮流計算 / 電気自動車 / マルチエージェント / 太陽光発電 |
研究実績の概要 |
本研究課題では(目的1)道路交通網と電力系統それぞれの挙動を詳細に表現できるシミュレータを準備し,それを連携した統合シミュレーションの開発を目的とする.続いて,この統合シミュレータを利用し,(目的2)EVの普及に伴う諸問題について定量的に検討を行う.統合シミュレータが2つのインフラシステムをそれぞれ精緻に表現することで,複数の分野にまたがる課題に対し整合性を保った状態で近接し,インフラシステムのデザインに寄与することを可能とするものである.初年度である2020年度は(目的1)にあたる統合シミュレータの開発を実施した. 第一に,代表者が開発に関わる交通シミュレータADVENTURE_Matesを基礎とし,電力系統との統合に向け電気自動車(EV)モデル等を拡張し,道路交通網のメカニズムを表現したシミュレータを開発した.既に交通工学的な検証の完了しているシミュレーションモデルを援用することで本課題で必要となる精緻性を十分に担保した.具体的には,すでに着手していたEVエージェントや充電ステーション(CS)オブジェクトのモデル化を見直し,放電機能の追加や予約機能の実装を行った. 第二に,電力系統の表現にあたってはEVの充電行動や分散型の再生可能エネルギーが及ぼす影響の卓越する低圧配電系統の挙動を精緻に再現することが要件となるため,国内外の配電系統潮流解析ツールに関する文献調査し,最終的にはOpenDSS等のシミュレーションツールキットを利用することを目標としつつ,まずは簡易なモデルを実装した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では(目的1)道路交通網と電力系統を精緻に表現した統合シミュレータ開発,(目的2)EV普及時に生ずる課題の整合的な検討と解決策の提案の2点を実施する.概要で述べたとおり,初年度において統合シミュレータの開発が部分的に完了しており,今後は(目的2)について検討を開始できる状況にある.以上のことから,3年間の課題期間を鑑み順調な進捗状況であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
上述している(目的2)においては,統合シミュレータを利用しEVと太陽光発電(PV)が大量普及した環境下における課題分析とその解決策を提案する.特にCSの配置問題は重要な課題であり,優先して取り組む.任意のシナリオに対し,EVの総旅行時間・消費電力を目的関数とした最適配置問題だけではなく,EVの急速な普及や少子高齢化といった今後予想されるシナリオに向けた多段階の配置問題としても定式化する. また,2020年度後半よりカーボンニュートラルに向けた取り組みの必要性が急激に増しているが,本研究課題ではこのような脱炭素の観点でシナリオを設計することが可能である.既存電力系統の設備容量に関する制約,カーボンニュートラル達成に必要とされるEVやPVの導入量を検討し,そのようなシナリオ下でどのような課題が生じ得るか,本年度開発した統合シミュレータによる精緻な分析を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主に電力系統シミュレーションにおける国際的な動向調査と研究者との議論のため複数回の国際会議参加を予定していたが,コロナ禍の影響により実行できなかった.また,研究代表者の所属の変更に伴う業務によって年度末に使用予定であった計算機及び記憶媒体等の消耗品の購入を行うことができなかった. 研究動向調査については引き続き次年度以降に計画している他,購入予定物品については次年度購入することを予定している.
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