研究課題/領域番号 |
20K14981
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近藤 早映 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (40805595)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リビングラボ / 組織市民行動 / 多主体共創 / 媒介変数 / 持続可能社会 |
研究実績の概要 |
本研究は、「リビングラボ」の効果を説明するため、OCBの高揚(実行促進および能力開発)という視点から評価し、効果を一層高める新しい「リビングラボ」の方法を提示することを目的とする。 今年度は、下記を実施した。 (ア)市民参加や市民協働を促す類似の概念の既往文献調査を実施し、「リビングラボ」活動の発生背景、想定される効果について学術的な位置付けの再整理を行う。 (イ)全国にある約40箇所の「リビングラボ」の運営者に対するアンケート調査を行い、活動の結果と地域的な特性(人口動態、経済・社会的性質)、活動特性、参加者属性、運営体制との関係を定量分析する。 (エ)OCBに関する既往文献調査を行う。 (イ)のアンケート調査では、全国の20リビングラボから回答を得た。結果として、開設において行政機関が主導するケースが約半数あり、資金面でも約3割が公的援助を受けていた。活動の目的は地域経済の活性化、超高齢化社会の課題解決、地域住民のQOL向上の順で多く、全て5割以上のリビングラボで選択された。参加者は、産官学民それぞれのセクターからまんべんなく集まっている。しかし、リビングラボの課題においては収益モデルがないことや運営人材と資金の不足を約5割が選択しており、行政視点で地域課題を主体的に解決してくには、経済的運営的な面でハードルがあるといえる。既往研究によると、欧州のリビングラボは、ICT技術の活用を核に新しい視点で社会課題にアプローチする活動をリビングラボと定義しているところもある。それにより、企業からの支援も取り付けやすく、息の長い活動が可能となる可能性がある。海外の先例と比較すると、我が国のリビングラボが行政サービスの延長として位置付けられているとも考えられ、目的を達成するためには新しい視点やアプローチの検討が必要と考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査とアンケート調査によって、日本のリビングラボの輪郭(活動特性、参加者属性、運営体制等)は把握できた。 しかし、これらと地域特性との関係の分析は未着手である。 また、多くのリビングラボが活動を制限する状況にもあり、事例調査が行えなかった。 さらに、自身の拠点が新型コロナウィルス感染拡大が深刻な地域に立地していることで様々な業務が影響を受け、想定より研究に費やす時間が制限された。 これらの影響で、進捗状況は当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度に実施予定であった(イ)の地域特性関連分析を行い、(ウ)事前調査を実施して、日本版「リビングラボ」の類型を示す。 その上で、因子を含む)を運営者らへのインタビュー調査および(ア)と(イ)の成果から抽出する。 さらに、(オ)媒介変数のOCB高揚に対する効果を、「リビングラボ」活動の参加者と運営者へのアンケート調査と補完的インタビュー調査から、多変量解析する予定だが、新型コロナウィルス感染拡大の状況によっては、事例の選定や現地調査が困難になることも考えられる。 調査対象と調査時期は慎重に検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文執筆と学会発表のための資金であったが、調査の進捗が多少遅れたことで論文執筆まで至らなかったことと、想定していた学会が開催延期となったことで、次年度使用額が生じた。
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備考 |
リビングラボの既往研究をセミナーで発表したレポートを掲載(9月23日、11月30日)
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