研究実績の概要 |
コロナ禍で「リビングラボ」の実地調査を自粛する必要があり、文献調査と論文及び書籍執筆に従事した。文献調査は、本研究の独自視点である「『リビングラボ』の効果を説明するため、OCB(組織市民行動)という視点から評価」についての新規性を強化することを目的に行った。具体的には、欧州での「リビングラボ」の興りを時系列に整理し、現行のリビングラボの活動類型を捉えながら、目的や活動のスキームが明確でモデルケースと認識される事例の抽出とその特徴を探った。それにより、全ての「リビングラボ」は5つの視点(Value, Influence, Realism, Sustainability, Openness)を有する前提であるものの、活動を構成する主要要素がそれぞれに異なり、したがって集まるステークホルダーもケースバイケースに決定され、最終的に4つのタイプ(Research Living Labs、Corporate Living Labs、Organisational Living Labs、Intermediary Living Labs)に分類されている。そうだとすると、やはり「リビングラボ」の価値評価がどこにあるのかという疑問が残り、ここに我が国の「リビングラボ」やその活動を進める上においての分かりにくさの要因があると考察した。しかし、5つの視点にあるOpennessは、本研究の「リビングラボ」がOCBの高揚に資するという仮説を支援するものと考えられる。また、Opennessを含む5つの視点を測る具体的な指標は示されてはおらず、OCBを高揚させる媒介変数の抽出を目指す本研究に新規性があると結論付けた。 ただし、本来の目的である、どのような媒介変数を経てOCBが高揚するか、そしてその効果については、2022年度に実際の「リビングラボ」の運営者及び参加者に対する調査を行い、明らかにしてゆく。
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