我が国の「リビングラボ」が、活動に際して収益モデルがないことや運営人材と資金の不足という課題を抱え、欧州のICT技術の活用を核に新しい視点で社会課題にアプローチするリビングラボとは異なることを明らかにしてきた。しかし、英国Bristol市のKnowle Media Center(KWMC)の調査から、コミュニティメンバーに就労機会の提供やアイデンティティの実感をもたらすことを重視した活動が、「リビングラボ」の継続性に寄与していることに示唆を経た。 そこで、今年度は、横浜市の各地域で同時期に興った「リビングラボ」が、各地域固有の特性を基盤としながら自立した活動を行っていることを捉え、10の「リビングラボ」に対してインタビュー調査を行い、価値共創と循環型経済の視点から活動を評価することで、一般的な「リビングラボ」の課題を克服しながら成果を挙げるための要素を抽出した。 その結果、6つの「リビングラボ」は、価値共創と循環型経済の視点から高い評価を得た。この評価は、リビングラボが拠点地域の地域性に基づいたテーマを設定し、地域住民が積極的に活動に参加すること、さらにはテーマに共感する個人や教育機関をカウンターパートとして活用し、事業やサービスの創出によって運営資金を獲得していること、リビングラボメンバーが複数の活動に横断して参加していることから導かれていたことを明らかにした。 なお、横浜市の場合、全ての「リビングラボ」は地域に根差した生業を主たる事業とする中小事業者が核となり、行政と適度な距離感を保って独立した活動を行っていた。この独自性は、欧州の「リビングラボ」の活動スタイルと共通した。
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