研究目的「WiFiシグナル計測によるリアルタイム匿名人流推定のためのフレームワークを利用し,避難シミュレーションでの人流データ利用の有用性を検証すること」の達成を目指し,「名古屋駅地下街エスカにおける人流のリアルタイム推定データを得る課題」及び「名古屋駅地下街エスカにおける避難シミュレーションによる避難誘導方法と推定避難時間の関係調査」に着手した. 1つ目の報告として人流計測実験についてまとめる.時空間粒度が可変の人流データ推定のために,2022年8月4日から5日にかけて名古屋駅地下街エスカで,本研究で開発した人流計測フレームワークによる人流計測(Wi-Fiおよび動画)を実施した.しかし,一部の計測装置でデータ欠損が生じたため,地下街全体の滞在者の時空間分布を得ることは困難となった.原因究明し,再計測を予定している. 2つ目の報告として人流シミュレータPTV Vissim を利用した避難シミュレーションについてまとめる.2022年に示したシミュレーション結果では,東側階段のみを利用する外水氾濫シナリオで避難時間が約14分と想定より長いことが判明した.まず,シミュレーション結果の信頼性を担保するために,「国土交通省の地下街の安心避難対策ガイドライン」で定められている地下駅からの避難時間目安の7分を目標に,すべての階段を利用する避難シナリオで歩行者挙動の調整を行った.その結果,不自然に人が押し合う挙動が解消し,313秒で避難が完了した.歩行者挙動の調整後,東側階段のみを利用する外水氾濫シナリオで誘導方法を工夫した結果,来場者数が約2000人の場合でも,502秒で避難が完了した.この報告内容および論文化に向けた調査研究は,計測自動制御学会 システム・情報部門学術講演会2024にて発表題目「エスカ地下街における避難シミュレーション挙動の調整とその効果の検証」(他4件)にて公表した.
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