研究課題/領域番号 |
20K14995
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
牧田 匡史 帝京大学, 理工学部, 講師 (50782413)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者 / 交通事故 / 運転操作 / ブレーキ操作 / ステアリング操作 / 人間工学 |
研究実績の概要 |
2020年度(以下,今年度)の研究実施計画である,“高齢者と若年者のブレーキ操作の違いの特徴を抽出できる実験方法と評価指標を創出”するために,着座姿勢違い(自由姿勢と指示姿勢)による男性10名(高齢者4名,若年者6名)を用いたブレーキ操作実験を行い,実験方法と評価指標の検討を行った. その結果,若年者にくらべて高齢者は,いずれの姿勢においてもブレーキ操作が遅くて弱い結果となった.ただし,着座姿勢の違いによる差はみられなかった.さらに,高齢者のブレーキ踏み込み動作は,関節角度変化が小さく,腰が前方に動いており,腰も使ってブレーキ操作をしていた.すなわち,高齢者は腰を使っての動作のため,踏み込み動作が遅くなっている可能性が示唆された.高齢者,若年者ともに着座姿勢による動作の差はみられなかった. 本研究の目的を達成するための第一ステップは,高齢者が得意とする運転動作,または不得意とする運転動作を明らかにすることである.今年度の成果は,ブレーキ操作における下肢の運転動作の特徴を高齢者と若年者,さらには各実験参加者の個体差として抽出が可能であり,目的達成に向けて意義のある成果である.また,2021年度(以下,次年度)の研究実施計画では,人体シミュレーション(人体FEM)を活用した検討を開始する.今年度の成果により,人体モデルを構築するうえで必要かつ,重要なデータが取得できたため,次年度は計画どおりに人体モデルの構築を開始できる. さらに,今年度,ブレーキ操作実験装置が完成したため,この装置と統合させたステアリング操作実験のための装置の作成を開始する.二つの実験装置を統合した装置を開発することで,実験参加者の運転動作全体の評価が可能となるため,今年度の研究成果は,上肢・下肢における各々の評価指標のみならず,上肢・下肢の動作を連動させた新たな評価指標を創出する礎となる重要な成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響で,特に高齢者の実験参加者を募ることが困難であり,予定していた人数(2020年度の研究実施計画では,高齢者・若年者を各6名)での予備実験を遂行できず,結果は高齢者4名,若年者6名となり,十分なデータを用いての検討ができなかったことが理由である. そのため,予定していた人数のデータが取得できるように2021年度中に追加実験を行い,その結果を研究の成果に照らしたうえで,2020年度の研究実施計画の完了とする.
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今後の研究の推進方策 |
まず最初に,2020年度に計画をしていた人数(高齢者・若年者を各6名)の実験データを取得するための追加実験を行い,これまで得られた知見の確度を高めるとともに,改めて2020年度の研究の成果としてまとめる. 次に,2021年度の研究実施計画で示した,次の①~③の項目について成果を挙げる予定である. ①“若年者と高齢者の特徴を抽出できる指標を開発し,その指標を用いて高齢者が得意とする操作,不得意とする操作の目処付けを行う”.具体的には,2020年度の予備実験および2021年度の追加実験の結果を用いて評価指標を選定し,その評価指標を用いて高齢者が得意,不得手とするブレーキ操作(動作)の目処付けを行う. ②“人体FEMを用いて,筋肉の力や骨格の角度,動作速度などの解析も行い,高齢者が得意とする操作,不得意とする操作を明らかにする”.具体的には,本予算により購入する人体FEMを用いて,ブレーキ操作実験を再現できる解析モデルを構築し,実験結果と解析結果とを合わせて,高齢者が得意とする操作(動作),不得意とする操作(動作)を明らかにする. ③“2022年度の研究実施計画で予定している着座姿勢(案)を創出するための実験の実験参加者(高齢者と若年者、20~70歳代の約30名を計画)の募集方法を決定する”.本計画については,新型コロナウィルスの影響により,20~70歳代の幅広い年代の実験参加者の公募は困難であるため,計画を変更する.変更後は,高齢者と同程度にブレーキの踏み間違い事故の多い25歳以下の実験参加者を学内で募り,その年代の実験結果で着座姿勢(案)の検討を行うことにする.着座姿勢(案)の検証は,高齢者で行う必要があるが,新型コロナウィルスの状況により,25歳以下の女性の実験参加者で代用することも視野に研究を遂行する.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた購入金額より安価で購入できたため,残額が発生した.残額は,次年度の学会参加費,論文掲載費,出張費などに充当する予定である.
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