三年目の2022年度は降雨情報からリアルタイムで降雨流出氾濫解析を運用するシステムを構築した。システムは東北地方の全ての一級水系および二級水系郡(近隣の複数の流域を対象にしたもの)に適用済みであり、2022年度の雨季に再現精度の検証を行った。一部のケースで洪水位の再現は良好であったものの、多くの地点で精度向上の余地が残された。2022年7月に宮城県北部で発生した豪雨時には、特に中小河川で河川氾濫が発生し、数値解析空間分解能の問題で上流域の河川が再現しきれない問題があった。これに対応するため、河川管理者の協力を得て、河道横断面のデータと最新のLPデータを取得することで、再現精度の向上を図った。 併せて、水害廃棄物の発生量推定精度を向上させるため、廃棄物発生原単位の見直しを行った。具体的には、既往論文を参考に、平成21年から平成30年までの主な豪雨災害時の水害廃棄物発生量のデータを用いることで、推定回帰式を見直した。最新の情報を用いることで、推定精度は向上するものの、洪水氾濫解析の再現精度に大きく依存することから、場所によって過大評価するところが見られた。水害廃棄物発生量推定のためには床下・床上浸水の判別に係る浸水深の予測精度が重要であり、地形データの収集と併せて、場所によっては排水網の考慮が必要であることが示された。
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