研究課題
広域地震・津波災害では企業が被災し,サプライチェーンを通じて被災地外の全国に生産停止などの被害が波及した。企業が被災した場合にサプライチェーンを通じた被害を軽減するためには,サプライチェーンネットワークにおける経済被害が深刻化するメカニズムを明らかにし,各企業の復旧状況に即した行動戦略を獲得する手法の確立が望まれる。そこで今年度は、まず各企業の被害推定と被害波及推定を行うためのデータ整備とモデリングをした。具体的には,南海トラフ地震などを想定した精緻な地震・津波被害の時系列推定結果を用いることで,各企業の物的被害・労働資本被害を推定した。被害波及に関しては,被害率と労働力から研究代表者が従来開発してきた数理経済学モデルを発展させ記述し,各企業の生産能力と企業間取引額を推定し,サプライチェーン全体で影響を計算した。またその過程で,基盤データの更新を行い,被害に影響する建物ごとの構造・築年代推定やサプライチェーンデータの更新を行った。また企業間取引データと言われるサプライチェーンデータから詳細な産業連関表を開発し,個別企業の影響が全国レベルでどのように波及するか既存のモデルによりシミュレーションするフレームワークも構築することができた。また復興についても,各企業をエージェントとし,企業の属性情報を加味した上で,行動を記述してエージェントモデルを構築することについての検討も行った。
2: おおむね順調に進展している
年度初めはコロナの影響や異動により計画通りに研究打ち合わせやデータアクセスができなく研究自体を上手く進めること出来なかったが、年度の後半にはその遅れを取り戻すべく研究に集中できたため年度を通じては計画通り進めることができた。
各企業をエージェントとし,企業の属性情報(業種,取引先,取引額,資本,人流など)を加味した上で,行動を記述してエージェントモデルを構築する。モデルの行動には,設備復旧,労働資本の確保,取引行動,代替取引などを記述する。その上でマルチエージェント深層強化学習モデルに適用して,シミュレーションを行う。この手法では,多くの特徴量を取り扱えるため,エージェントは復旧を目指して特徴抽出と行動過程を学習し,生産能力の復旧過程に応じた最適な行動戦略の取得が可能になる。複数主体が関わる意思決定の問題であるため,行動の相互依存的状況を細かに想定してモデル化する。またある災害対策を行った場合の効果を定量化するために,対策シナリオを用いる。例えば,耐震化を行うという対策シナリオを用意して,それを行った場合とそうでない場合に同じ最適化行動をとった結果,転帰がどのように,またどのくらい異なるかを定量的に比較する。災害対策の有効性が分かれば企業は限られた費用で効率的に対策を講じることが可能になる。
コロナにより出張の制限があったため、当初出張予定の学会の中止もしくはオンライン開催となったことで旅費分の未利用額が生じた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件)
Environment and Planning B: Urban Analytics and City Science
巻: 0 ページ: 0-15
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