研究実施計画立案の段階では、災害リモートセンシングにより得られた知見を現場で効果的に活かしていくための方法論を構築することを目的に、(1)リモートセンシングによる土砂災害域抽出手法の高度化、(2)ドローン空撮画像による人検出手法の高度化、(3)地方自治体の広域災害発生時の意思決定工程の調査、(4)これらの意思決定をリモートセンシングで支援する方法論の構築、の4つの課題に取り組む計画を立てた。各課題に取り組むことで得られた知見を以下に整理する。 (1)の課題においては、北海道胆振東部地震の被災地を撮影したALOS-2/PALSAR-2データにより生成した特徴量を利用し、ランダムフォレストにより土砂災害域を検出するモデルを構築した(総合精度:78%)。また、関連する課題として、2018年西日本豪雨災害の被災地を対象とし、ALOS-2/PALSAR-2データにより浸水した建物域を検出するモデルを構築した(総合精度:97.8%)。局所最適解に陥らないようにすることで、従来法から精度を改善した点が新しい点となる。(2)では、ドローン空撮の際にさまざまな角度・高度で撮影を行い、既往の物体検出モデル(M2Det)を応用した際に、特に精度が高く出る条件について整理を行った。これらの知見は実際の災害時におけるドローン利用方法の指針策定に寄与する結果と考えられる。(3)については、某地方自治体の地域防災計画および危機管理課への聞き取りを行い、捜索活動の現場で行われる意思決定のフローを作成した。実際の災害時の動きは複雑なので、そのフローがそのまま現場で利用できるとは限らないが、少なくとも事前に、災害発生時の連携についてシミュレーションする材料になりうると考えられる。(4)については、既存の災害対応業務の中で、リモートセンシングが貢献しうるタスクを具体的に抽出し、応用方法について検討を行った。
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