研究課題/領域番号 |
20K15007
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
今野 明咲香 常葉大学, 社会環境学部, 講師 (30802623)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地理情報システム / 活断層 / 地震断層 / 離隔距離 / 土地利用規制 |
研究実績の概要 |
本研究では,地形から予測された活断層と実際に出現した地震断層の位置が離隔する要因を明らかにすることを目的に,高精度な測量が可能なRTK-GNSS測量と地理情報システム(GIS)を用いて,活断層と地震断層の離隔距離の定量的な分析を行った.当該研究課題の採択初年度である2020年度は,1)GIS上での解析をおこなうための既往データのデジタイズ及び,現地で使用する測量器の精度検証のための事前測量を実施した.得られた結果から既往データと現地での測量結果の比較を行い,数十センチメートルオーダーでの議論が可能であることを把握した.また,2)2016年熊本地震で出現した変位センス(ずれの方向)が異なる布田川断層と日奈久断層の地震断層を対象に,GISを用いて地震断層と活断層の離隔距離の定量的分析を行い,断層の変位センスおよび地質条件と比較を行った.解析の結果,得られた離隔距離のヒストグラムでは,両者に共通する特徴と変位センス毎に異なる特徴が見いだされた.このことは,活断層近傍の規制帯幅は断層の変位センスや地質などを個別の条件を考慮して設定する必要があることを示している.これらの結果を踏まえ,現在世界・日本の各地域で施行されている活断層近傍の規制帯の距離を比較し,2016年熊本地震で地震断層の出現に伴う被害リスクに効果的な規制帯の距離を検討した.以上の成果は今後の研究計画で予定されている多様な離隔要因と離隔距離への影響を検討するための基礎的な資料となる.2021年度以降も現地調査と並行して,他地域についても離隔距離の分析を行いデータの拡充を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延により,2020年度全体を通して県境を越える移動の自粛および規制が行われ,予定していた現地調査が困難となったため,研究室内で実施可能なGISでの解析と,現地での測量に必要な機器の精度検証に計画を変更した.したがって,現地調査でのデータが得られていないことから進捗にやや遅れが生じている.しかしながら,現地での測量で取得予定のデータを円滑に分析に供するための事前の準備を行う事ができたため,2021年度以降に新型コロナウイルスの感染拡大状況を注意しながら現地調査に注力し,遅れを挽回する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた活断層と地震断層の離隔距離の結果に基づき.離隔距離に影響を及ぼす離隔要因の検討を行う.離隔要因には活断層に起因するものと地震断層に起因するものに分けられる.前者については,1.認定された活断層線の鉛筆の太さによるずれ,2.活断層を引く基図のスケールによるずれ,3.基図となる地形図そのものの誤差によるずれ,4.侵蝕による崖の後退など地形変化による判読のずれ,後者については5.GPS測量の観測精度によるずれ,6.地形や軟弱な地盤(地質)の影響による出現位置のずれ,7.断層の変位センスの違い(縦ずれ・横ずれ等)による出現位置のずれがある.これらのうち2021年度は5.の要因について,現地調査でのRTK-GNSS測量を行いGPS測量との誤差把握を行う.得られた結果と既往研究で検討された他の要因を照らし合わせ,各離隔要因が活断層と地震断層の離隔距離にどれほど影響を与えたかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により,2020年度全体を通して現地調査実施が困難となったこと,学術大会がオンラインでの開催となり移動する必要がなくなったことが主な理由である.また,これに伴い当初予定していた測量器およびGISでの解析用周辺機器について物品購入および解析のための人件費使用の計画を変更し,2020年度使用予定金額を2021年度に繰り越した.そのため2021年度には,2020年度実施できなかった現地での測量調査を行いデータの取得・解析を計画しており,その際に必要な旅費および人件費,使用機器等の購入に予算を使用する予定である.
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