本研究では,強風災害時に顕著な被害を受ける木造住宅の屋根部を対象として,破損被害の進行の過程・メカニズムを実物大実験・数値解析により明らかにし,既存の建物が持つ屋根部の耐風性能,破損危険度を評価する仕組みの開発を目的としている。 特に,「部材の経年劣化」に着目し,築年数が経過した住宅における強風災害危険度の明示が可能となる手法の開発を目指す。強風災害危険度検討対象とする部位は,申請者が過去に行った強風被害調査で顕著な被害が見られた屋根-壁接合部,屋根葺き材,及び,一連の被害の起点と考えられる窓ガラスである。それらの部材を対象として,屋根の葺き材の種類,勾配,部材構成,築年数,建物配置といった個々の建物条件をパラメータとし,強風災害危険度評価を行う。 最終年度では,昨年度まで新型コロナウイルスの影響により実施が遅れていた実施フェーズ1の「動的荷重効果を考慮した実物大耐力実験による屋根部の破損メカニズムの解明および耐力情報の拡充」の一部として,強風災害時に被害を受けやすい窓ガラスを対象とした動的載荷実験を主に行った。本実験では,新品窓ガラスを試験体として動的風荷重載荷装置を用いて任意の風圧力(静的・動的)を与え,窓ガラスの経年劣化を定量的に評価することを試みた。その結果として,本研究で行った載荷レベルでは新品の窓ガラスと比較して耐力に顕著な差はみられなかった。しかしながら,小さい載荷レベルにおいても窓ガラスが破壊するケースが見られ,窓ガラスの耐風性能評価におけるばらつきの評価の必要性を改めて指摘した。本成果は,強風災害時の建物被害の起点と考えられる窓ガラスの耐風性能評価を行ったことで,顕著な強風災害を防ぐ一端を担うものと考えられる。
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