研究課題/領域番号 |
20K15010
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
内藤 昌平 国立研究開発法人防災科学技術研究所, マルチハザードリスク評価研究部門, 特別研究員 (90560946)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 被害状況把握 / リモートセンシング / 深層学習 / コンピュータビジョン / UAV |
研究実績の概要 |
令和3年度においては、地震前後における建物高さの変化データを用いて、深層学習による建物被害判別精度を向上させるため、被害判別プログラムの高度化を行った。具体的にはまず、地震前後それぞれにおいて、建物等の地物を含んで空間補間した詳細な標高データである数値表層モデル(DSM)を計算し、それらの差分をとることにより作成した、地震により生じた建物高さ差分データを教師データとして使用した。次に、建物高さ差分データを射影変換により斜め航空写真と重ね合わせ可能な画像に変換し、深層学習による建物被害判別モデルに使用可能な教師データを作成するプログラムを開発した。続いて、航空写真(RGBの3チャンネル)と高さ差分データ1チャンネルの合計4チャンネルを教師データとし、物体検出アルゴリズムとして高い性能を示すYOLOv3による深層学習を行い、建物被害を無被害、損傷、倒壊の3区分に判別するプログラムを構築した。 熊本地震前(航空レーザー測量データから作成)および熊本地震本震直後(ステレオ撮影装置を使用して作成)におけるDSMの差分を計算し、この高さ差分と航空写真の計4チャンネルを使って深層学習による建物被害判別を行った。次に、同じテストデータを用いて、(a)4チャンネルを使って学習したモデルと、(b)航空写真のみの3チャンネルを使って学習したモデルの被害区分精度を比較した。なお、この場合の正解データは現地調査における外観目視データを使用した。 結果、(a)のモデルは正答率が65%、F値が倒壊69%、損傷59%、無被害69%であり、(b)のモデルは正答率が68%、F値が倒壊71%、損傷62%、無被害71%といずれも実用性の観点から許容可能な精度となったが、建物高さ差分を加えることによる精度向上は確認することが出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度においては建物高さデータを含む教師データの拡充、および被害判別モデルの高度化を行った。結果、航空写真のみならず建物高さデータを使用した4チャンネルの画像を入力として使用した、新規性の高い被害判別モデルを構築することができた。また、従来の3チャンネルのモデルを使用した場合と比較し、被害判別精度を定量的に比較検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回構築したモデルにおいては、高さ差分データの入力方法が精度向上に直接つながることが確認できなかったため、次年度以降は、高さ差分データを入力データの1チャンネルとして使用する方法ではなく、画像のみを用いた被害判別結果と高さ差分データを組み合わせ、決定木を用いた方法で分類精度を高める方法を試行し、さらなる精度向上に努めることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の残額が生じたが、残額については翌年度有効に使用する予定である。
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