研究課題/領域番号 |
20K15015
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江草 大佑 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (80815944)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルミニウム / 6000系合金 / 時効析出 / クラスター / STEM |
研究実績の概要 |
本研究では、電子顕微鏡法を用いた直接観察により6000系Al合金の時効析出初期段階に存在する溶質クラスターの構造解析を目指している。 令和2年度については①観察に適した組成・熱処理条件の選定、②ナノクラスター等の局所欠陥構造の電子顕微鏡法による直接観察可否の検証を目的として、研究を行った。 ①については、硬さ測定を中心とした物性測定により準安定相の状態変化を推定し、観察に供する試料の作製条件を選定した。 ②については、適切な結像条件に設定した環状暗視野検出器を用いる事により、時効初期に形成されるナノスケール溶質クラスターの空間分布を直接観察可能であることを見出した。一方で、研究計画立案時に想定したエネルギー分散X線分光(EDS)法を用いた組成分析については、現行装置の検出感度では明瞭な分布を見出すことは困難であると考えられた。そのため、溶質分布を検出可能な他の手法(電子線エネルギー損失分光、3次元アトムプローブ法)による評価を並行して行い、構造解析を進めている。 上記結果より、溶質クラスターの状態変化を反映した構造データが得られつつあり、今後第一原理計算等を用いたエネルギー評価により妥当なクラスター構造モデルの構築を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和2年度については①観察に適した組成・熱処理条件の選定、②ナノクラスター等の局所欠陥構造の電子顕微鏡法による直接観察可否の検証を目的として、研究を行った。 ①については、硬さ測定を中心とした物性測定により準安定相の状態変化を推定し、観察に供する試料の作製条件を選定した。 ②については、適切な結像条件に設定した環状暗視野検出器を用いる事により、時効初期に形成されるナノスケール溶質クラスターの空間分布を直接観察可能であることを見出した。 上記結果は申請時の計画と比して想定以上の進捗であり、令和3年度以降も継続して行う解析により、研究目的の達成が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
申請時計画と令和2年度成果の比較より、今後の研究推進方策を以下に設定する。①分光法等の活用による溶質空間分布の評価、②エネルギー評価によるクラスター構造モデル検証 ①については、研究計画立案時に想定したエネルギー分散X線分光(EDS)法を用いた組成分析では、現行装置の検出感度において明瞭な分布変化を見出すことは困難であると考えられた。そのため、溶質分布を検出可能な他の手法(電子線エネルギー損失分光、3次元アトムプローブ法)による評価を並行して行い、構造解析を進める。 ②については、直接観察の成功により溶質クラスターの状態変化を反映した構造データが得られつつあり、今後第一原理計算等を用いたエネルギー評価により妥当なクラスター構造モデルの構築を行う。 以上の2方針について、組成・熱処理条件を調整した試料に対して実施し、時効挙動に影響する溶質クラスター構造の解析手法を確立する。
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