研究課題/領域番号 |
20K15016
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
三井 好古 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (90649782)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 強磁場 / 規則-不規則変態 / ホイスラー合金 / 強磁性 / 反強磁性 |
研究実績の概要 |
初年度は、ホイスラー合金Ni2MnAlの規則化に対する磁場効果について研究を行った。Ni2MnAl合金は不規則相であるB2相と規則相であるL21相で磁性が異なる。B2相は反強磁性、L21相は強磁性である。規則-不規則変態温度が低いため、高い規則度のL21相を得るためには、長時間の熱処理が必要である。そこで本研究では磁場中熱処理によって、ゼーマンエネルギーを駆動力としたL21相への規則化の促進が期待できる。 Ni2MnAl試料について、ゼロ磁場及び磁場中熱処理を施した。母合金は高周波溶解法または、反応焼結法で作製した。磁場中熱処理では、熱処理温度及び印加磁場は、それぞれ623 Kおよび673 K、最大15 T中での熱処理を行った。その後、磁場中熱処理を施したNi2MnAl試料について、X線回折測定及び磁化測定を行った。 熱処理試料についてバルク体のX線回折測定を行った。全ての試料でL21相に由来する回折線が観測できず、B2相からの規則化については、X線回折測定からは、評価できなかった。 磁場中熱処理試料の磁化曲線より、磁化は磁場中熱処理によって増加することがわかった。これは、反強磁性B2相から強磁性L21相への相変化が磁場によって促進したことによる、と考えられる。また、熱磁化曲線では反強磁性B2相に由来するネール温度と強磁性L21相に由来するキュリー温度を示すカスプが得られ、B2+L21相の2相共存で規則化が進行することがわかった。 673 K熱処理試料では、磁化からL21相の相成長について評価し、磁場によってL21相の相分率・成長速度が増加していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、2つの系のホイスラー合金を対象に規則不規則変態への磁場効果を解明することを目的としている。初年度は、そのうちの1つであるNi2MnAl合金の磁場中熱処理効果について検討を行った。 Ni2MnAlのB2-L21相変態については、規則度が徐々に増加しているのではなく、B2+L21相の2相共存で、熱処理温度で得られる規則度のL21相が成長すること、そして磁場によってその成長速度が増加することを示唆する結果が得られ、「今後の予定」で記載するように、磁場効果を解明するための指針が得られた。 以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、以下の3点について進める予定である。1) Ni2MnAl熱処理試料のL21相生成の観察 2) Ni2MnAlの磁場中熱分析 2) Mn2NiGa合金の合成及び磁場中熱処理である。 1) L21相生成の観察については、熱処理においては、これまでの結果では徐々に規則度が増加していくわけではなく、B2相と一定の規則度を有するL21相の2相共存状態において、L21相が成長することを示す結果が得られた。そこで、磁場中成長の振る舞いを明らかにする。具体的には、L21相の相分率の時間依存性を評価し、磁場効果について明らかにする。 2) L21-Ni2MnAlの磁場による相成長促進効果は、規則-不規則変態温度に磁場が影響している可能性がある。そのため、磁場中熱分析を行い、磁場中の規則-不規則変態温度を評価する。 3) Mn基ホイスラー合金であるMn2NiGa合金を合成する。母合金の磁場中熱処理を行う。磁化測定によって、Mn, Ni, Ga原子の規則性について検討を行い、原子配列に対する磁場効果を明らかにする。 以上3点の実験から、強磁場による磁性規則合金の規則度制御について解明する。
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