• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

新規ハイパーカゴメ反強磁性体の開拓と新奇物性探索

研究課題

研究課題/領域番号 20K15019
研究機関東京工業大学

研究代表者

気谷 卓  東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30771828)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードスピンフラストレーション / ハイパーカゴメ反強磁性体 / トポケミカル反応 / 熱測定
研究実績の概要

本研究は,三角形が3次元的に頂点共有したハイパーカゴメ格子を有する反強磁性体の探索を目的として様々なアプローチで物質合成を試み,それによって得られた試料から新たな物性を創出しようとするものである。本年度は主に以下の4つの項目に取り組んだ。(1)ハイパーカゴメ反強磁性体Zn2Mn3O8およびCo3V2O8の中性子回折測定を行い、どちらの物質も反強磁性転移温度以下で磁気波数ベクトルk=(1/4, 1/4, 1/4)に由来する磁気ブラッグピークの観測に成功した。このことから磁気空間群はR_I32をもつことが予想されるが、正確な磁気構造の解析には現在のところ成功していないため、引き続き解析を進める。(2)イオン交換反応によるZnMgMn3O8の合成について、合成条件の最適化により不純物相の無い試料の合成に成功した。各種物性測定から、熱容量には相転移を示唆するピークが観測されるが、他の物性には何の変化も見られないことを確認した。基底状態をさらに詳しく調べるため、次年度に中性子回折実験を行う予定である。(3)ハイパーカゴメ反強磁性体候補物質Zn2Co3TeO8の合成を進めたが、どのような手法を試してもZn-Coサイト混合を20%以下に抑えることはできなかった。そこで、サイト混合がないCo5TeO8から徐々にZnをドープしていく際の物性変化を調べた結果、元々反強磁性的であった磁気相互作用がZnドープとともに強磁性的なものに変化したことから、Zn2Co3TeO8の基底状態は強磁性体となっており、フラストレーションは生じないことが予想された。(4)ハイパーカゴメ格子を有するLi2(Mg, Zn)Mn3O8からリチウム脱離を行い、電荷自由度を変調さることで新規ハイパーカゴメ反強磁性体の合成を試みた。しかし、過去の報告に反してリチウム脱離が進行せず、合成は現在のところ上手くいっていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では新規ハイパーカゴメ反強磁性体の創出に向けて、(1)スピン自由度、(2)電荷自由度、(3)格子自由度をそれぞれ変調させることで、多様な物質群の創出を目指している。これまでに、スピン自由度に着目したハイパーカゴメ反強磁性体の探索から、S=3/2をもつZn2Mn3O8とZnMgMn3O8、またS=1/2をもつCo3V2O8の合成に成功し、いずれの試料でも相転移を示すことを発見してきた。また、ハイパーカゴメ反強磁性体の候補として考えられてきたZn2Co3TeO8は、基底状態としては強磁性体であることを明らかにした。その一方で、本年度の元々の目標であった、電荷自由度に着目したハイパーカゴメ格子をもつ物質に対するリチウム脱離の試みは上手くいっておらず、この方針での物質群の拡張には失敗する形となった。

今後の研究の推進方策

最終年度には,ハイパーカゴメ格子を有するLi2(Mg, Zn)Mn3O8のAサイトイオンや陰イオンを他のイオンに置き換え、格子自由度を変調させることで、新しい物質の探索を進める。また、これまでの実験からZnMgMn3O8が熱容量にのみ相転移の兆候を示す興味深い現象、いわゆる隠れた秩序が観察された。そこで、この現象をさらに詳しく調べるために、磁性を担うMnサイトに非磁性の4価Tiをドープした際に、秩序様式がどのように変わるかを明らかにしたいと考えている。また、5Tの磁場までは相転移が安定していたことから、磁場ではなく圧力に対してどのような変化を示すかを調べることは相転移の起源を調べる上で興味深い。そこで、ピストンシリンダー型の高圧熱容量測定セルの開発を進め、相転移の圧力依存性を調べていきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた原因としては2つあり、(1)想定していた試料合成がうまくいかず測定に取り掛かれなかったこと、(2)熱容量・電気抵抗・誘電率測定に用いている物理特性測定装置PPMSが故障し測定を進められなかったことである。
そのため、次年度では装置の修理が必要となり、これには大まかに80万円の修理費が掛かる予定である。試料合成に関わる出費は、既知の物質についてイオン種を変えた新規物質の合成を進めるための試薬や、真空封入のための石英管の購入、そして合成可能なことが分かっているZnMgMn3O8に対するTiイオンドープ試料の合成のための試薬を購入する予定である。そして、それらの低温物性測定を行なうために液体ヘリウムを購入していく。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Emergent antiferromagnetic transition in hyperkagome manganese Zn2Mn3O82021

    • 著者名/発表者名
      Kitani Suguru、Yajima Takeshi、Kawaji Hitoshi
    • 雑誌名

      Physical Review Materials

      巻: 5 ページ: 094411(1-6)

    • DOI

      10.1103/PhysRevMaterials.5.094411

    • 査読あり
  • [学会発表] 新規ハイパーカゴメ反強磁性体ZnMgMn3O8の合成と磁性2021

    • 著者名/発表者名
      気谷卓、川路均
    • 学会等名
      日本熱測定学会
  • [学会発表] ハイパーカゴメ反強磁性体Zn2Co3TeO8 の合成と物性2021

    • 著者名/発表者名
      相合一毅、気谷卓、川路均
    • 学会等名
      日本熱測定学会
  • [学会発表] Low-Temperature Physical Properties of S = 3/2 Hyperkagome Antiferromagnet ZnMgMn3O82021

    • 著者名/発表者名
      Suguru Kitani
    • 学会等名
      International Symposium on Thermal and Entropic Science for Young Thermodynamicists (ISTES-YT-2021)
    • 国際学会
  • [学会発表] Low temperature magnetic properties of hyperkagome antiferromagnet Zn2Mn3O82021

    • 著者名/発表者名
      Suguru Kitani, Hitoshi Kawaji
    • 学会等名
      The 12th International Conference on the Science and Technology for Advanced Ceramics (STAC-12)
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi