近年、シンチレータの高性能化を実現するため、より複雑な化学組成のシンチレータが開発されているが、それらの材質はいずれも単結晶である。一方で透明セラミックスシンチレータに関する研究において、これまではCe添加Gd3Al2Ga3O12に代表されるガーネット構造の酸化物のみが扱われてきた。よって、複雑な組成を持つハロゲン化物透明セラミックスのシンチレータ応用に関する研究は未開拓である。そこで本研究の目的は、ハロゲン化物透明セラミックスのシンチレータとしての可能性を検証するため、三元系フッ化物の透明セラミックスシンチレータを開発する事とした。 当該年度は蓄積型蛍光体としては発光特性が報告されているNaMgF3に着目し、透明セラミックスの合成を試みた。NaMgF3の結晶系は立方晶であることから高い透明性のセラミックスが得られる可能性がある。合成には放電プラズマ焼結法を用いることで、目的物質の合成とセラミックスの焼結を一度に行うような焼結条件を見出した。最終的には可視領域 (~500 nm)で約40%の拡散透過率を持つセラミックスを焼結し、粉末X線回析により目的物質の合成に成功していることを確認した。このNaMgF3透明セラミックスに発光中心としてEuを添加することによって発光特性の発現を試みた。結果としてX線照射下においてEu2+の5d-4f遷移および4f-4f遷移に起因するシンチレーションピークが375 nmおよび360 nmに観測された。241Am線源のα線を照射した際の全吸収ピークの検出に成功し、その発光量はEu濃度が0.5%の時に最大となった。
|