研究課題/領域番号 |
20K15029
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
植田 紘一郎 学習院大学, 理学部, 助教 (60794089)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 固体窒素源 / 酸窒化物 / 光触媒 / 無機合成 / 物質探索 |
研究実績の概要 |
本研究課題「固体窒素源を用いた高速物質探索を軸とする新規酸窒化物光触媒の創生」では、申請者が独自開発した窒化方法を利用し、高速でミクロスケールの酸窒化物探索をおこない、新規の酸窒化物光触媒の発見を目指すものである。具体的には、各種溶液法で調製した種々の酸化物前駆体粉末について、固体窒素源を用いて窒化処理し、①新たな酸窒化物を合成すること②得られた酸窒化物の結晶構造・電子状態密度を明らかにすること③光触媒特性を明らかにすることを目的としている。 本年度は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)を主な構成元素とした酸窒化物合成について検討した。Ta系の化合物について、新規の化合物を得ることには成功していないものの、これまでに報告されている物質について、より簡便に合成することが可能になった。また、思いがけないことに、無機-有機複合体材料の作製に成功した。こちらについては新規の酸窒化物とはいえないものの、光触媒としての応用が見込めるため、各種評価を開始している。Nb系化合物についても既存の物質、あるいは既存物質の固溶体を合成するに留まっている(同一組成の固溶体の報告はない)。ただし、Ta系化合物以上に多くの物質について、同一の手法で条件をのみを変化させることで、簡便に作り分けることに成功している。また、光触媒以外への応用可能な物質、複合体も得られていることから、本研究課題の発展性が予想以上に高まることを期待している。V系に関しては、まとまった知見が得られていないため、次年度以降も検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、固体窒素源と、精密合成した酸化物の前駆体を利用して、高速でミクロスケールの酸窒化物探索をおこない、新規の酸窒化物光触媒の発見を目指すことである。 『新規の酸窒化物光触媒を見つける』という点においては、現段階で目的を達成できていない。ただし、研究開始時には予想しえなかった、Ta系化合物における有機-無機複合体の創生や、Nb系化合物における合成プロセスの簡便化および光触媒以外への応用については、著しい進展があった。加えて本年度は、東京、大都市圏を中心としたCOVID-19の全国的な流行により、大幅な研究時間の短縮を余儀なくされた。以上すべてを鑑みた結果、進捗はあるが、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度得られた知見を元に新たな元素系へと研究を展開する予定である。また、本年度検討したTa、Nb、V系についても引き続き研究をおこなう。 研究を遂行する上での課題として、COVID-19がある程度終息するまでは、活動時間の制限が制限される可能性があるため考慮しつつ研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の全世界的、全国的な流行のため、国内外への出張を自粛した。これによって、当初計上していた旅費が大幅に軽減されることになった。また、学会もオンライン開催がほとんどとなり、情報漏洩防止の観点から参加を見合わせることが多かった。幸いにも出張の必要がなくなったことで、実験器具や試薬を購入することができた。次年度以降も、旅費については状況をみて柔軟に対応していく。
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