本研究では、発光イオンとして2価のユーロピウムイオン(Eu2+)添加したアルカリ土類アルミン酸塩の長残光蛍光体の表面欠陥と発光・残光特性の関係を明らかにすることを目的としている。これまでに、単斜晶系Eu2+添加アルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4 : Eu2+)について、広いEu2+固溶範囲おいて,Eu2+固溶量によって酸素およびEu2+の欠陥量が変化し、それに伴い発光特性が変化することを明らかにしてきた。さらに、欠陥状態の違いによる特性を明らかにするため、真空中で酸素欠陥量を増やすことで変化を確認した。結果として真空中で合成した試料に関しては、内部量子効率が約1/2に減少し蛍光寿命が1/3程度短くなった。これは、真空中で合成したことにより、試料中の表面欠陥を含めた構造欠陥量が増大したためであると考えられる。 さらに、真空熱処理により表面吸着物質を除去し、大気暴露することなく光学測定が可能な独自のガラスセルユニットを用いて表面吸着物質の影響のない状態での評価を試みた結果、SrAl2O4:Eu2+において、真空熱処理温度の上昇にしたがい発光強度が減少することがわかった。例えば、EuAl2O4においては500℃で真空熱処理するによりその発光強度が1/2、内部量子効率が1/3にそれぞれ減少した。これらの現象は、表面吸着物質の影響ではなく、真空熱処理による酸素の欠陥量の増大に起因するものだと考えられる。この状態の試料にH2Oを吸着させることで発光特性がさらに減少することが明らかになっており、詳細な調査を継続している。本課題において、SrAl2O4:Eu2+などをはじめとした長残光蛍光体において、表面吸着の無い状態での発光特性の評価に成功し、その欠陥状態により、発光特性が変化することが示唆された。
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