研究課題/領域番号 |
20K15032
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岩佐 祐希 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (90838947)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複合アニオン化合物 / 赤色蛍光体 / 酸塩化物 |
研究実績の概要 |
本研究では、層状複合アニオン化合物の特異な構造や多様なアニオンの配位環境を活かし、発光寿命の短い赤色蛍光体を探索し、高強度励起用の白色光源のための蛍光体の開発を行うものである。レーザーなどの励起源を用いた白色光源において、波長変換用の蛍光体を高強度で励起した際に生じる輝度飽和が光源の高出力化のための課題となっている。本研究では、特に長波長領域で発光する蛍光体の蛍光寿命を短くすることにより、この問題の解決に取り組む。特異な構造を持つ層状複合アニオン化合物を蛍光体の母体に用いることで、CeやEuといった5d-4f遷移による発光を示す発光中心元素を長波長領域で発光させることを目標とする。 一年目は、蛍光体の物質設計および、試料合成・評価を行った。結晶構造内に酸素と塩素を含んだ層状酸塩化物AE3RE2O5Cl2(AE:アルカリ土類、RE:希土類)を中心に研究を行った。これらの物質群はRuddlesden-Popper型のペロブスカイトの類縁構造をもち、岩塩層のOイオンをClイオンで置き換えた構造を持つ。Sr3Sc2O5Cl2にCe3+を添加した結果、550 nmをピークにもつブロードな発光が観測された。この発光は合成雰囲気によって発光強度が大きく変化することから、今後は合成条件の最適化が必要となる。また、発光波長を長波長化するために、さらなる物質探索を行ったところ、新規物質であるBa3Y2O5Cl2を発見した。この物質は比較的大きなYイオンをBサイトに持ち、Yが八面体中心からシフトした特異な配位環境をもつことが分かった。現状ではBa3Y2O5Cl2にCeを添加した試料での発光を観測できていないが、Euなどの他の発光中心元素の添加を行うことでユニークな発光特性を見出すことを期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、新規複合アニオン化合物を母体にした5d-4f遷移の蛍光が観測されている。また、物質探索の過程で発見したBa3Y2O5Cl2については、Journal of Materials Chemistry Cに論文を発表し、Hot Papersおよび表紙に選出された。
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今後の研究の推進方策 |
Sr3Sc2O5Cl2の合成条件の最適化を行い、この発光の励起強度に対する発光特性を評価することを目標とする。また、新物質探索も継続して行い、より長波長領域で発光を示す化合物の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのため、国際学会が延期されたことや出張が出来なくなったため、旅費分として確保していた予算の余剰が発生した。当該助成金は翌年度の出張旅費及び消耗品の購入を計画している。
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