研究課題
実材料の多くは多数の微結晶から構成された多結晶体である。結晶間に存在する結晶粒界(以下、単に粒界と呼ぶ)は、数nmという微小領域にしか存在しないにも関わらず、しばしば材料の巨視的な特性を決定づける。粒界は結晶粒の方位差によって多様な原子構造を示し、示す性質も様々である。粒界原子構造と材料特性の相関・因果関係の解明は、材料設計において極めて重要と言える。本研究では、原子レベル計算による構造・特性解析と機械学習を併用し、粒界原子構造-特性相関を定量的に解析する手法を確立するとともに、特性支配因子の解明を試みた。対象特性は、遮熱コーティングや熱電変換材料の断熱性、電子デバイスの放熱性において重要な熱伝導度とした。最終年度においては、SiとSrTiO3 を対象とした粒界構造の探索と熱伝導解析をさらに推し進めた。Siにおいては、高精度機械学習ポテンシャルを使用し、45種類の粒界構造とその熱伝導度を求めた。その結果、共有結合性であるSi粒界の熱伝導度では、結合角の乱れが主要な低減因子であり、加えて特定の方位差で形成される巨大な空隙も熱伝導度を低下させることが判明した。一方、SrTiO3においてはおよそ60種類程度の多様な粒界構造とその熱伝導度を求めた。イオン結合性であるSrTiO3では、MgOと同様に、粒界の空隙が熱伝導度を低減させる主要な因子であった。一方で、強固なTi-O結合が形成される粒界では比較的熱伝導度が高いことが判明した。このように、材料系によって熱伝導度を支配する要因が異なることが、より大規模なデータから定量的に明らかになった。また、ZrO2粒界については、昨年度構築したポテンシャルを使用し、粒界構造及びドーパント偏析構造を導出した。複雑な粒界構造を形成しやすいZrO2において、構造記述子を活用することで、粒界特有の局所配位環境を定量的に理解することに成功した。
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Angewandte Chemie International Edition
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