研究課題/領域番号 |
20K15042
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
Wang Kehsuan 東京理科大学, 工学部工業化学科, 講師 (30778618)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電気化学触媒 / 酸素発生反応 / 触媒形状制御 / オペランド観測 / X線吸収微細構造 |
研究実績の概要 |
本課題では、再生可能エネルギーを利用した水電解による水素製造のため、安価で三次元的に機能する高効率水分解触媒の開発を目的に実験を行った。これに向けて、(1) 触媒クラスター同士の空間制御、(2)触媒を修飾する担体電極基板の三次元化、(3)触媒形状の制御という三つの観点から水分解触媒の空間構造を精密に制御することに着手した。 本年度は、触媒クラスター同士の空間制御に関して、構造異性体であるL-アラニンおよびβ-アラニンを添加したニッケル前駆体溶液から酸化ニッケル触媒クラスターを作製することで、これらの分子とニッケルイオンとの錯体の構造が酸化ニッケル触媒クラスターの集積化に与える影響を検討した。これらの錯体溶液を前駆体として作製した酸化ニッケル触媒の化学構造を同定すると、いずれの触媒もNiOOH構造であることが示された。しかしながら、L-アラニンを含む溶液で集積された触媒のクラスターサイズはβ-アラニンを含む溶液で集積された触媒と比べて小さいことが判明した。また、L-アラニンを含む溶液で集積された触媒クラスターの配向を揃えることができることを確認した。これは、L-アラニンのアミノ基とカルボキシル基がクラスターに配位することで触媒クラスター同士が精密に集積していると考えられる。一方、触媒クラスターの配列に配向性があることにより、高い活性及び耐久性を有する優れた触媒として機能していることを種々の分光学的解析により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の計画通り、有機分子を導入することで、触媒クラスターの配向といった空間制御により、三次元的に水分解触媒として機能を持たせることに成功した。そのため、研究がおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の知見に基づき、触媒を修飾する担体電極基板の三次元化を組み合わせ、固液界面の反応場を著しく増加させることで、三次元的に機能する高効率酸素生成触媒の開発を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)旅費として計上していたが生じなかったため、および(2)論文投稿費が学内から補助されたためである。繰り越し金は主に物品費として使用する予定である。
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