近年、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用した水の電気分解による水素の製造が強く望まれている。しかし、水素発生電極には優れた触媒が開発されているものの、酸素発生電極には大きな過電圧を必要とする触媒しかなく、水分解反応全体の効率を大きく落としている。そこで、小さな過電圧で効率的に水から酸素を発生する酸素生成触媒の研究・開発が急務となっている。そこで本課題では、再生可能エネルギーを利用した水電解による水素製造のため、安価で三次元的に機能する高効率水分解触媒の開発を目指して実験を行った。これに向けて、(1) 触媒クラスター同士の空間制御、(2)触媒を修飾する担体電極基板の三次元化、(3)触媒形状の制御という三つの観点から水分解触媒の空間構造を精密に制御することに着手した。 最終年度は、触媒を修飾する担体電極基板の三次元化に関して、ハロゲン化物イオンを電解液に加え、ハロゲン化物イオンが金マイクロ・ナノ構造の電析に与える影響を調査するとともに、金微粒子が緻密に配列した構造体を作製することを目的に実験を行った。その結果、電極電位の印加とともにAu(111)面に特異吸着していたヨウ素イオンが酸化されてヨウ素酸イオンとして安定化する様子を観測した。そのため、低電位でのAu電析では全てのAu面が等しく結晶成長することで球形のAu粒子を形成するのに対して、高電位ではAu(111)面の結晶成長が吸着イオンで阻害され、スパイク状のAu粒子が得られることが明らかになった。また、異なるアニオン吸着を利用した電析法により、空間的に異方性を持つ様々なナノ・マイクロ構造を持つ三次元Au粒子膜を開発することができた。
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