研究課題/領域番号 |
20K15044
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松前 貴司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (10807431)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | Ga2O3 / 酸化ガリウム / ダイヤモンド / パワー半導体 / ウルトラワイドギャップ / 放熱基板 / 直接接合 |
研究実績の概要 |
β-Ga2O3は大きなバンドギャップを持つため次世代パワー半導体材料として期待されるが、熱伝導率の低さに起因する熱暴走が実用化への課題となっている。β-Ga2O3からの良好な放熱のため、固体中最大の熱伝導率をもつダイヤモンド放熱基板との複合化に関する研究を行っている。 2020年度はβ-Ga2O3とダイヤモンドの表面に-OH官能基を導入し、その後これらを重ね合わせてから250℃にて加熱することで、表面間に脱水反応が起こり直接接合が得られることを確かめた。接合界面にせん断力を付加すると、14 MPaに達した際に界面から破断が発生した。この強度は例えばアメリカ国防総省のMIL規格を十分に満たすように、強固なものが得られたと言える。また透過型電子顕微鏡を用いた界面観察により、接合界面における非晶質層が1 nm程度の厚さとなり、極薄の中間層を介してβ-Ga2O3とダイヤモンドが接合された。これによりβ-Ga2O3デバイスからダイヤモンド放熱基板への効率的な伝熱が期待できる。 またダイヤモンドへの-OH官能基導入において、硫酸と過酸化水素水の混合液を用いるよりも、アンモニア水と過酸化水素水を用いることで、より高い接合強度が得られることが分かった。X線光電子分光を用いた表面分析により、硫酸と過酸化水素水の場合はダイヤモンド表面に硫黄化合物が残留するが、アンモニア水と過酸化水素水の場合は残留物がほとんどない理想的な表面が得られることが分かった。このアンモニア水と過酸化水素水の混合液は一般的な半導体基板洗浄液であり、既存製造プロセスでも多く用いられるものである。 2021年度はβ-Ga2O3/ダイヤモンド直接接合の熱的・電気的界面特性を評価し、パワー半導体への応用可能性を明確化する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β-Ga2O3とダイヤモンドの直接接合が得られ、界面微細構造の観察および機械的特性の評価が完了した。今後熱的・電気的界面特性の評価に展開する。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度はβ-Ga2O3/ダイヤモンド直接接合の熱的・電気的界面特性を明確化する。接合体において熱剥離せずに保持できる温度を調査し、またβ-Ga2O3側を薄化した接合体を用いてβ-Ga2O3を発熱させ温度上昇を評価することで接合体の放熱特性を評価する。さらに不純物添加したβ-Ga2O3とダイヤモンド基板を接合し界面に通電することで電気特性を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費支出に関して見こせなかった分において発生した。2021年度において試料購入費に充てる予定である。
|